カフェ・ギムナジウム

□3.夜明け前の楽園
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院長は腕に巻かれた愛用の、シャネルのプルミエールを覗いた。9時50分。

「さあ、今日も学院の規則を復唱します! 一つ、いつでもお客様に夢を!」

「いつでもお客様に夢を!」

私語は密着・小声で・囁くように。
彼女来室禁止。
清く、背徳、美しく。

などの規則を復唱した後、全員が玄関横に並ぶ。
神楽坂理央が木製の扉を開くと、ドアベルが鳴り響いた。

午前十時、授業開始。
外で並んでいた女性客たちが、薔薇のアーチをくぐってくる。

「いらっしゃいませ。当学院にようこそ」

都会の喧騒から逃れ、薔薇のアーチをくぐるとそこは禁断の楽園。
口にしてはいけない果実ほど甘く感じる、蠱惑的な虚飾の世界。
今日も彼らは乙女たちに、そんな果実をほおばらせる。
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