カフェ・ギムナジウム

□6.苦悩の楽園
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「定番のオムライスやカレー、ハンバーグなどといった男性に好まれるメニューが大半です。ドリンクはコーヒー、紅茶、コーラ、ジュース類でして」

普通の大衆的な喫茶店ですね、と森田はつけ加えた。
『乙フェス』用のメニューのチェックをしていた院長は、ルビー色に輝く万年筆でペン回しを始め、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「ふん、勝ったわね。どうせ男性の発想でしょ。乙女の禁断の園に紛れてハーレム気分みたいな。じゃあ、うちの学院を誤解して真似ただけね。執事喫茶やホストクラブみたいなのとは訳が違うのよ。うちの生徒たちの甘く危険な関係を、最高のお茶とスイーツとともに、お客様に妄想していただくためにあるのよ!」

「メニューを見ても、あまりミッション系スクールというイメージでもないですからね」

『カフェ・ギムナジウム』のメニューはケーキやパイ、クッキーやスコーンなどの焼き菓子類が主で、甘い物以外は卵やきゅうりなどの、小さめにカットされたサンドイッチがあるだけだ。
そこも院長のこだわりで、“イケメンの前で乙女が分厚いサンドイッチを頬張れない”という配慮もある。

ドリンク類はコーヒーや紅茶が数種類あるが、あとはココアとミルク、冬季限定のホットオレンジがあるだけで、その他ジュースやコーラの類は無い。
ホットオレンジは院長の数あるこだわりの一つで、昔読んだ漫画の影響で、男子校といえばホットオレンジなのだそうだ。

「そうよ! 所詮エロゲに夢中なキモオタ男子には、うちのような崇高で美しい背徳の世界を生み出せなくってよ。オーッホッホッホ」

「むちゃくちゃ言いますね、院長…。あ、募集要項には、ピアノやヴァイオリンなどの特技を持つ方は特に大歓迎、だそうで」

院長は天板を激しく叩いて立ち上がった。
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