ルーピン夢 長編
□ほぐずみーど。。。
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部屋に帰ると、思い出したことがあった。
『グリフ.......。ごめんよーッ。』
「くぅん、」
グリフは、まるで私がいなかった理由を知っていたかのように、ベッドへ誘った。
『ありがとう、でもその前にご飯ね。今日も食べてないでしょ?糖蜜パイしかないけど、食べて。明日はチキン持ってくるよ。』
「くぅんくぅん」
座ってろ、と言っているように見えた。
なぜなら、彼は自分で食べ物のありかを知っていたからだ!
『すごい、頭がいいのね。私なら大丈夫よ。だって、ずっと寝てたん
だもの。』
「ミユウったら、.....」
遠くからパンジーの声が聞こえてきた。
(この部屋はかなり広くてベッド同士が離れているという設定です)
『!!!』
パンジーのベッドをカーテン越しに覗くと、すやすやと眠っていた。
寝言のようだ。
小声で話しているつもりだったのに、うるさくて起こしてしまったかと思った。
よかった。
グリフが食事を終えると、お風呂場へ連れて行った。
『おいで〜♪洗ってあげるよ〜。』
「くぅん..........」
グリフは隠れてしまっている。
『ど〜したの?先に入っちゃうよ?』
グリフから目を離し鏡を見ると自分の裸が映る。
身体が変化し始めて、少し怖い。
これから、どうなっていくのかな。
大人になんてなりたくない........
私が入っている間も体をふいている間もグリフは来なかった。
だが、私が服を着終わると、寄ってきた。
『あ、きたきた。おいで。』
手を伸ばすとグリフは走ってきて、嬉しそうに鳴いた。
「キャンキャン!!」
『あ、グリフってオスだったんだね!そりゃ、一緒に入りたくないよね。』
「くぅん.......」
グリフは首を振っているように見えた。
『さ、乾かそう!』
グリフを洗い終えると、魔法を使い、一瞬で乾かした。
『っごほっこほ......!』
「ワン!!!」
『ごめんね、大丈夫だよ。』
グリフが心配そうに見上げている。
昨日は薬で眠れたみたいだけど、今日は眠れるかな?
暗い廊下をグリフと戻っていく。
『!!』
誰かの足音がする。
前からだ!!
「誰だい、こんな時間に。」
この声の主。
『ルーピン先生?』
ルーピン先生の微笑みは暗闇でも感じられた。
「ミユウ?どうしてここに、.....この犬はペットかい?」
『んー、はい!!(いまのところ)グリフっていう名前です!』
「へぇ.......」
ルーピン先生は、グリフを撫でた。
一瞬、目を見開き、その犬を見つめたが、私の声で我に返った。
『今、お風呂に入ってきたんです。この子と一緒に。』
「え?!一緒に?!」
『あ、大丈夫ですよ。お風呂自体には浸かっていませんし。』
「そうじゃなくて、いや、何でもないよ」
「きゅーん、きゅーん」
グリフが笑っているかのように鳴いた。
『まるで、人間のようで、新しい家族みたいな感じです。私、家族いなかったし、嬉しくて。』
ルーピン先生もグリフも温かい視線で私を見守っていてくれた。
「そうか、いいんじゃないかな、ミユウが帰る場所ができたなら。」
『はい......あ、あの、昨日は医務室まで運んでいただいたみたいで......』
「倒れた記憶がないんだって?」
なんで知ってるんだろう?
『あ、はい』
「セブルスから聞いたよ。大丈夫かい?」
『はい、すっかり忘れてしまって、.....ごめんなさい。』
「いや、思い出さなくていいことだよ。」
ルーピン先生は、私の髪に指を通した。
ドクン
ドクン
ドクン
先生の優しい手が気持ちよくて、目を細めた。
『先生......』
「ん?」
『.....先生がピンチの時は助けますよ。』
「有難う、僕も強くなって、君を助けるよ。」
先生は、最近自分のことを〈僕〉という。
実は、そっちのほうが好きだったりする。
『有難うございます。』
「寮まで送っていくよ。」
『うんう、グリフがいますし、大丈夫ですよ。』
「わかった、おやすみミユウ。グリフ、ミユウをよろしく頼むよ。」
「くぅん。」
ルーピン先生は、見えなくなるまで私たちの後姿を見守っていてくれた。
もっと、触っていてほしい。
私を。ずっと、貴方の胸のなかで眠らせて。