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□あーん。
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ある夜のコト。
仕事を終えたブルマがリビングへ行くと、相変わらずの表情をしたベジータが座っていた。

トレーニングから帰ってきた所だったのだろう。

シャワーを浴びたのか首からタオルがぶら下がっている。



「あら、ベジータ。お帰り!帰ったなら一声かけてくれたらいいのに」


「………フン。何故そんな七面倒くさいコトをしなきゃならん。

オレは腹が減って耐え切れないんだ。
オマエに構っている暇なんかあるか。」


フン、と鼻をならしたベジータにブルマはムッとする。



「なによーその言い方!!!!

それが愛する女にとる態度なわけ!?

アンタって、ぜんっぜん王子様らしくないわねっ!
もっとレディーに優しく出来ないの?」


「……………くだらん。」


ケッ、と悪態をつきながらベジータは自分ように取り分けて残されていた夕飯の皿からラップをはぐ。

恋人同士になって一週間近く。

今までそういったことに無縁だったこのサイヤ人の王子様に多くを求めるのは間違っているとは分かっているけれどブルマはもっと日常的に関わりを持ちたかった。



「オレは飯を食う。オマエはさっさと寝るんだな。」


「……………。
呆れた。

もう、こうなったら絶対に構ってもらっちゃうわよ!覚悟しなさい、ベジータ!」


「お、おい!なにしやがる!!!!」



文句を言うベジータの隣に無理矢理座る。
ベジータが使わないで放置していた箸を持っておかずの煮物をつまんだ。

そのままニッコリ笑いかける。



「まあまあ、いいじゃないの。

じゃあベジータ。
ほら、あーん。」


「……あ………あーん…………だと?」



ベジータが目を丸くする。


「そうよ。

さっさと口を開けて、食べなさいよ。」


「ば………バカにしているのか?!

飯くらい、一人で食える。」


「うるさいわねえ。たまには恋人らしいこと、してくれたっていいんじゃないかしら?

ダレも見てないんだから。

ほら、あーん。」


迫りくるブルマにベジータの怒りは限界に達する。
同時に恥ずかしさにも限界が訪れ、いつの間にか顔は真っ赤になっていた。



「ふ………

ふざけやがって!!!!!!!

サイヤ人の王子である、このオレが!女なんかに飯を食わせてもらうなど…」


「つべこべ言ってないで、食べなさいよ!!!!!!!」


ブルマが一喝する。
そのまま勢いでベジータの口に煮物をほうり込んだ。


「んぐっ………!!!!!?」


ベジータの目が見開かれる。
驚きに揺れる瞳と既に食べていた他の食べ物を懸命に飲み込もうとしているベジータの様子がブルマには可笑しくて仕方ない。

やがてすべての食べ物を飲み込んだベジータが、物凄い形相でブルマを睨んだ。


「き、貴様ッ!!殺す気か!

いくらサイヤ人でもな、食い物が喉に詰まれば死ぬんだぞ!」


「あ〜ら、そう。

愛しい彼女の運んだ料理で死ねたら本望じゃない?」


「ハッ!!!!
バカも休み休み言うんだな。
ヘドが出るぜ!」

「なによ〜。そんなに怒らないでよ。

ここ最近、アンタ修行ばっかりして全然あたしに構ってくれないから………意地悪してみただけじゃないの。」


「は…ぁ……!?」


ブルマの言い分にさらに頬を染めるベジータ。

ブルマはクスクスと笑いながらベジータの頬に両手を添えた。


「ねえ、ベジータ…キスしてもいい?」


「……………。」


ベジータがバツが悪そうに黙り込み視線をそらす。

否定しないのであれば、満更でもない証拠である。

ブルマはそれを分かっていてベジータに口づけた。

軽く触れた唇。
離してそっと顔色を伺う。



「……………。」



「………………。

……フン、相変わらず、下品な女だ。」



ようやく口を開いたベジータから出てきたのはまたもや悪態だった。

ブルマは頬を膨らませながら腕を組む。



「なによ。顔真っ赤にしていうことじゃないわよ?」

「ば!馬鹿な!!そんなはずないだろう!!!」


「あはははは!!

ほらあ!また更に赤くなったわよ、アンタ!」


「う、ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサーイ!!!!!!」



照れて叫ぶベジータの唇を今度はしっかりと塞ぎ込む。

ベジータの固まった表情にまたからかいたくなったがブルマは抑えた。



「パパとママが寝てるんだから、大声出さないでよね。」

「な………!も、もとはといえば、貴様が…!」

「あーあ。こういうとこはピュアなのにね。

ねえ、もっと素直になってくれていいのよ?」


ブルマの提案に目眩がしたかのようにベジータはため息をついた。

色恋沙汰が苦手なことはベジータも自負している。

逆にこんなにも素直に自分の気持ちを口にするブルマがベジータには信じられなかった。



「ねえ、聞いてるの?ベジータったら!」

「う、うるせえ!黙りやがれ!

この、恥知らずめが!!!」



思わず怒鳴ってしまいベジータは口をつぐむ。

罪悪感からブルマの表情が見れずにしぶしぶ夕飯の続きを口に運びながら呟いた。



「………すまん。」


「………。

謝ることじゃないでしょ?」



ようやくあげた視線の先にブルマの笑顔がある。

ベジータはホッとしながら食べ物を咀嚼した。



「そうだ、ベジータ。

明後日デートしない?」

「デート………?」


「そうよ。恋人同士が一緒に出かけるの。

どこがいいかしら?」


まだ行くとも言っていないのにブルマはデートとやらのプランを考え始める。


よくわからないが、こいつといくならまあ満更でもないか、とベジータは思うのだった。




【おわり】

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