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□優しい未来を。
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「よ…よう、ベジータ。
久しぶりだな……」



突然のベジータの登場にヤムチャの声が上擦る。

ベジータはヤムチャを…というよりも、ブルマの肩におかれたヤムチャの手を一瞥したように見えた。



「何しに帰ってきやがった。」


ベジータが静かな声で言う。
ヤムチャは緊張のなか頭をかいた。


「いや、帰ってきたっていうか、久しぶりにちょっと寄ってみただけさ。

ブルマやみんなが元気にしてるかと思って…」

「帰れ。」



ヤムチャの話など聞く耳持たずといったようにベジータが腕組みをした。

ヤムチャは息を飲む。
ベジータが怖いのは昔からだし、殺気を身に纏っているのもいつものことだが

彼の漆黒の瞳に非常に静かな怒りが込められているような気がした。




「あ、あのなベジータ。

オマエがオレタチのことを嫌ってるのはよくわかってる。
もし上手く人造人間を倒した後には、またきっとオマエと闘わなきゃならないんだろうな。」



ヤムチャの言葉にベジータがフッと口角をあげた。



「よくわかってやがるじゃないか。

人造人間のあとはカカロット…そして貴様ら地球人だ。
せいぜい楽しみにしておくんだな。」


ベジータが言いながらこちらに歩いてきて同じテーブルの1番はじの椅子にドッカリと腰をおろす。



視線はヤムチャから逸らさない。

まるで獲物を狙うかのような鋭い目つきだった。



「オレタチのことは…仕方ないさ。

一度ぶつかった者どうしだからな。

でも、」



ヤムチャは肩に手を置いたままのブルマの寝顔へと視線を落とす。
そして苦し紛れにも言葉を紡いだ。




「こいつみたいな関係のない地球人は………

見逃してやってほしい。」


「……………。

フン。昔の男の分際でよく言うぜ。」



ベジータが鼻で笑い、腕組みをしながらそっぽをむく。


ヤムチャは一瞬ベジータの発した言葉の意味が理解出来ずにいた。


だが脳に到達した言葉が、ヤムチャの胸に引っ掛かる。



「確かに……オレとブルマは…上手くいかなかったさ。

だけど………」




ヤムチャはベジータの表情を見つめた。




あの勝ち誇ったような笑い…。

自信と優越感の漂う態度。



まるで、そう。



―今は自分のモノのような―…




ある可能性にいきついたヤムチャは目を見開いた。

冷や汗が流れる。



うそ……だろ?


まさか?!



「ベジータ、オマエ……………!」


「…………分かったら、さっさとその薄汚い手を離すんだな。」


本人の口から聞きだそうとした途端、ベジータの鋭い眼光に身動き出来なくなる。

その瞳に睨みつけられたままヤムチャはゆっくりとブルマの肩に置いていた自分の手をどけた。



「………それでいい。」



ニヤリと笑ったベジータが椅子を倒して立ち上がると

ヤムチャをほうりなげてブルマをヒョイと担ぎあげた。



その通常お姫様抱っこと呼ばれる抱き方のままヤムチャを見下ろすベジータが



出会った当初より数十倍も恐ろしく見えた。




「ありえない図だ…」


「なにか言いやがったか?」


ベジータに言われてヤムチャは慌てて視線を床に落とす。


そんなヤムチャをみてベジータは鼻を鳴らした。



「そういえば。

こいつはまだ俺たちの関係をダレにも喋っていないようだ。」


ブルマをお姫様抱っこしたままベジータはツカツカとヤムチャのそばにやってくると、その身体を蹴り飛ばす。



「ダレにも言うんじゃないぞ?

人造人間と闘う前に俺様に殺されたくなければなぁ……」



痛みに呻くヤムチャを無視し、ベジータはそのまま寝室にブルマを運びにいった。
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