職場で繋がる
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平日の朝。まだお客が少ない時間で、店は会社に行く途中のサラリーマンが多い。
午後に比べて、シンと静かな店は少し寂しい。接客は天火で事足りるので、私と白子は注文のコーヒーを淹れたり、午後に備えての仕込みをする。
「灯、なんか客が呼んでんぞ」
『どんな人?』
「一人は眼帯の男、もう一人は巻き髪の美人…顔が似てたな。
知り合いか?」
心当たりがありまくりだ。
白子は目を細め、ドス黒い雰囲気を出し始める。
『知り合いかな。
ちょっと行ってきても良い?』
「……変な事をされてたら、すぐに行く」
そんな大袈裟な、と席へ向かう。
二人の客は私を視界に入れるとニッコリと笑った。
『またサボり?
阿国、芭恋』
「だって学校なんてつまらないもの」
「へいくわい者もうるせぇしな」
この二人は曇 阿国と曇 芭恋。
珍しい男女の双子で、空丸の学校から少し離れた場所にある高校の三年生。
学校がつまらないからと、よく此処に来るサボりの常習犯。
『今という人生を謳歌したらどう?若者よ』
「人生を謳歌…なら今夜 空いてる…ゴッフゥ!」
「生憎、うちはそういった誘いは御法度でね。帰ってもらおうか」
「今のは芭恋が悪いわよ。
店長サンの側で灯を誘うなんて」
芭恋の頬に白子の右ストレートが決まり、約1m程 飛んだ芭恋はドサリと倒れ込む。
流石、白子。
「あら、新人さん?」
「どーも、初めまして。
灯の兄の天火デス」
「灯の…。似てねぇ」
『義兄だからねぇ』
芭恋と阿国と天火を見比べてみる。私よりも遥かに似ていた。
やっぱり先祖繋がりで親戚関係だったのでは?
「灯、今日 此処に来たのは単なるサボりじゃないのよ」
「俺達の学校周辺でお前の事を聞きまわってる奴がいる。
次は曇神社付近へ移動するそうだ」
一気に空気が重くなる。
私は思わず息を呑んだ。