職場で繋がる
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「さて、云い訳を聞かせてもらおうか」
「灯と自分の妻を捨ててまで、海外へ行った理由を」
「じゃねーと、灯とは話させねぇよ」
「三人とも、そんな喧嘩腰に云うな!……ただ、俺も聞きたいです」
白子、小太郎、天火の殺気とも云える怒りにボディーガードらしき男はガタリと立ち上がる。
それらを制したのは灯の父。
「…そうだな、君達には話す義務がある。」
はぁ、と溜息をついて。彼はコーヒーを一口 飲む。
「美味い」とホッとしたように笑う彼はどう見ても、悪い事をする人間には見えない。
「灯は俺と妻の一人娘でね。妻に似た子供が産まれたものだから、可愛くて仕方なかったよ。
しかし、俺は医師でね。まだ灯が幼い頃に海外へ派遣される事になった。
安全なら連れて行きたかったが、行く事になったのは まだ戦争が続く危ない土地。…連れて行けなかったよ。
妻が死んだときも手紙は来たが、帰れない状況。灯の居場所も分からなかった俺は早く仕事を終わらせる事に専念した。
そして、やっと帰ってこれた。すぐに向こうに戻らないといけないが…。
ボディーガードは要らなかったんだが、向こうの人達が付けてくれた。怪しませて申し訳ない。」
「…で、灯を捜し当てて如何するつもりだった」
「やっと、戦争が終わったんだ。灯を連れて行ける状況になった。
できれば、家族二人で暮らしたい」
「巫山戯るな」
ゆらりと立ち上がる小太郎。
側にあったナイフを掴み、灯の父に投げようとするが、白子に止められる。
「何故だ…。こいつは、また灯の幸せを崩そうとしている。俺達の敵だ」
「落ち着け。
灯の幸せは灯が決める事。俺達が口を出すべきじゃない」
「分からないな。
灯が行って、一番 困るのは お前と曇だ。何故、何も云わない」
「……灯には幸せになってほしいからな」
「姉貴が行くって云うなら、笑顔で見送ってやりたい」
小太郎は心底、理解出来ないという表情をして席に着く。
奥でカタリと音がした。