職場で繋がる

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あれから、あっという間に結婚式が執り行われた。

白子と夫婦という関係になった私は、曇家を出て白子と同居している。慣れない新生活は皆の助けがあり、やっていけている状態。

父は結婚式を見た後、すぐに海外へ飛び立った。あの号泣と笑顔は一生忘れられないと思う。
因みに彼は、次会う時は孫を期待すると余計な事を云い残している。

そして今日、カフェは貸切。いつも以上に賑やかだ。


「くっそぅ!白子、灯を泣かせたら承知しねぇからな!」

「おいら…灯姉がいなくても頑張るっス」

「白子さんなら大丈夫だろ。宙太郎も、姉貴なら毎日でも会えるから泣くな。
白子さん、くれぐれも姉貴の事 宜しくお願いしますね」

「うん、分かってるよ」

「灯、おめでとうございます」

「貴方は一人で背負い込むところがあるから、心配ね…何かあったら私達に連絡しなさいよ」

『ありがとうございます。牡丹、妃子』


涙を流す者もいれば、怒る者、喜ぶ者、何を考えているか分からない者まで様々だ。
取り敢えず、女性陣は喜んでくれている様子。


「牡丹!俺達もそろそろ…」

「云わせへんで!まったく、油断も隙もあったもんやない」

「…おめでとう、と云うべきか」

『羨ましいですか、独り身』

「煩い。…だが、昔の馴染みだ。大変な事があったら云え。手伝える事なら手伝ってやろう」

『……調子狂います』

「おい、景光。見たか?」

「見た。…あの蒼世と灯が仲良く接しとる」


辺りは騒然とした。
勿論、私も寒気がした。あの蒼世が友好的になったのだから。
学生時代の私達を知っていれば当然の反応だ。


「あら、それ 結婚指輪?」

「綺麗ですね」

『阿国も錦ちゃんも興味あります?やっぱり女子ですねぇ』

「灯、今からでも遅くない。俺と…」

「お前が灯を、よく口説く男か」

「げ、店長の双子か…」

「灯を口説くとは、良い度胸だ。表へ出ろ」

「まったくだ。小太郎さん、手伝います。灯さん。結婚、おめでとうございます」

「お前んとこの家族構成が分からねぇ!」


芭恋の首根っこを掴んで外へ出て行った小太郎と佐吉。
いやぁ、仲良き事は良き事です。

数時間後、ボロボロになる人もいれば、目が真っ赤に腫れた人もいた。
それでも、最後は皆 笑顔。やっぱり、此処はそうでなくては。

どれだけ時が経っても、此処は皆を笑顔にする交流の場であってほしい。
だから、次の日も また次の日も私達は店を開ける。


『いらっしゃいませ!』


それが私達の職場です。
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