loud voice

□03
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『……』

「あ、起きた?今 看護師さんを呼ぶから」


訳が分からない。朝起きたら人が居たなんてこと有り得ない。
まず何処だろう、此処は。白で囲まれた部屋。取り敢えず私の部屋で無い事は確かだ。


『…ここは?』


声も大分掠れている。それに気付いた目の前の女性は申し訳なさそうに眉を下げた。


「フェンリル極東支部の病室よ。覚えてない?あの後、貴方 出血多量で倒れちゃったの。2日も目を覚まさ無いから心配したわ」

『…ぁあ、思い出した。とすると、貴方はあの時のゴッドイーター?』

「ええ、橘 サクヤよ。君は?」

『高菜 リヒト。あの時はありがとうございました』


深々と頭を下げると、彼女は慌てて私の頭を上げさせた。
落ち着いて見れば、綺麗な人だ。気さくで明るい。きっとこの支部では慕われているのだろう。
…その服はどうしてズレないのか気になる。


「よかった!目を覚まされたんですね」

「この子かい?アラガミから女の子を護ったという子は」


シャッとカーテンを開けて現れた看護師と眼鏡をかけた男性。
男性は興味深そうに私を観察して、クイッと眼鏡を上げた。


「私はペイラー・榊。ここの科学者だ。
まずは幾つか質問させてもらおう。名前と家族は?」

『名は高菜 リヒト。家族はいません』

「いない?」

『幼い頃、二人とも亡くなりました』

「両親の職業は何か分かるかい?」

『さぁ?二人とも共働きでしたし、職業を教えてもらった事はありません。
でも、父は腕輪を付けていたので多分ゴッドイーターです。
あ、名前も知りませんよ』


サカキ博士は一通り質問を終えると、その場で顎に手を当ててウロウロと歩き出した。口からはブツブツと何か小声で話している。
その間に看護師さんは真剣な表情で私を見る。嫌な予感しかしない。


「リヒトさんの肩を治療させて頂きました。
…アラガミに強く噛まれすぎたのか、手遅れでした。菌も沢山 身体に入ってしまっています。暫くは熱が出て辛いかもしれません」

『……手遅れ?』

「…やっぱり気付いてなかったのね」


酷く悲痛な顔の二人。
噛まれた右腕を触ってみる。しかし、そこに本来あるべきはずの腕はない。何処にも無い。


「噛まれてから時間が経ち過ぎていたんです。神経もやられていて…腐敗する可能性もあったので、やむなく切断という処置をとらせて頂きました。今は麻酔が効いています」

『そう…ですか』

「君、利き腕は右かい?」

『はい』

「なら決まりだ。治療とリハビリも兼ねて暫くは入院だよ。話し相手は彼女達に任せよう。私も偶に見にくるからね。
じゃあ、後は頼んだよ」


早口に言う事だけ言って去ってしまった博士に私は呆気にとられるしかなかった。
腕が無くなったというのに、酷く落ち着いている自分自身に驚いた。
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