loud voice

□05
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病室生活も大分飽きてきた。
箸はまだ扱える見込みもなく、トイレや風呂以外はほぼ室内で過ごしている。
本も全て読み終わり、暇を持て余す。居住区に住んでいたら有り得ない事だ。

そこで考えた。
よし、プチ脱走しよう。

幸い大人しくしているおかげか、看護師さんのガードは緩い。サクヤさんも今日は来れないかもしれないと言っていた。
腕が目立たないように長袖を羽織り、病室から出ると丁度病室へ入ろうとしていた看護師さんと鉢会う。


「あら?リヒトさん、どちらへ?」

『少しトイレに』

「そうですか。何かあったら呼んでください。まだ熱もあるんですから」

『はい』


なんともアッサリと信じて病室に入っていった看護師さん。
私は人がいない事を確認すると急いでエレベーターに乗り込んだ。

先に乗っていたゴッドイーターの少年は驚いた顔をしたが、すぐに人懐っこい笑みを向ける。


「君もエントランスに行くの?」

『…うん』

「へぇ、ゴッドイーターじゃなさそうだけど、誰かのお見舞い?」

『そんなところ』


会話終了。
黄色い少年は気まずそうに目を泳がせる。別に無理に話さなくてもいいと思うのだが、少年は一生懸命言葉を探す。見ていて愉快だ。


「えっと…ここに来たのは初めて?」

『初めて』

「ならさ、少しだけ案内するよ!もうすぐ俺の同期も帰ってくるから一緒にさ」


エレベーターの扉が開く。
病室とは違う賑やかな音。多くのゴッドイーター達。品の良さそうな一般人に怪しい商売をしている男。
極東支部の中にも、こんな賑やかな場所があったんだと新たな発見。
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