loud voice

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病室と同じ階にあり、一番奥にある部屋。研究室ではペイラー・榊と極東支部 支部長のヨハネス・フォン・シックザールが興味深げに画面に映し出されているデータを無言で見つめていた。


「これは実に興味深い」


榊が口癖ともいえる言葉を発言する。
画面に映し出されているのは、黒髪の厳つい男と赤眼の綺麗な女。どちらも二人の知り合いだ。


「高菜とリアネスか」

「ああ、改めて見ると懐かしいね。
二人の登場にも驚きだが、何より驚くべきは彼女だよ」


彼女。つまりリヒトの事だ。
リヒトが運ばれてきたとき、彼女の細胞の一部を採取した榊は興味本位で彼女の細胞を調べてみたのだ。

外では「厄病神」と呼ばれる彼女。もしかするとソーマと同じように産まれながらにして何らかの偏食因子を持っているのではないかと。

その考えは見事に当たった。
彼女も産まれながらにして偏食因子を持っていたのだ。
P53偏食因子が何らかの形で変化したと思われる、彼女独特の偏食因子を。P73偏食因子に近いような気もするが、全くの別物だ。


「どういった経緯で彼女に宿ったのか。父親の遺伝子が彼女に影響をもたらしたと思うのが妥当だが」

「分からないな、前例が少なすぎる。
とりあえず、彼女は暫く此処に滞在させるように。もしかするとアラガミを引き寄せる性質を持っているかもしれない。
外壁の労朽化している場所に近づけたら危険だ」

「それには賛成だよ。彼女の偏食因子が何に影響をもたらすか未知だからね。
片腕があれば、ゴッドイーターとして怪しまれる事なく此処で生活する事も可能だったかもしれないが…」


リヒトと神機の適合率は高かった。腕があれば、今頃リヒトは適合試験を受けていただろう。早々に発見できなかった事が悔やまれる。


「そのとうりだな、ペイラー。実に惜しい人材だ。聞けば子供を一人抱えて大型アラガミから逃げ切ったそうじゃないか。
しかし今の彼女は何の役にもたちはしない」

「まぁ、彼女のリハビリや処置が済むのは暫く先だ。それまでに対策を考えようじゃないか」


まだリヒトに打ち明けるべきではない。彼女の偏食因子が何に影響するかのかすら分かっていない状態で伝えたところで更に不安をもたらすだけだ。
何にせよ普通の人間とは一味も二味も違うリヒト。人は普通とかけ離れているものを嫌う生物だ。居住区の生活は大変だったろうと想像した榊は思う。

(少女の未来に幸多からんことを)
 

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