loud voice

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「君がリヒトか。サカキ博士から話は聞いている。先程はご苦労だった」


誰かに似た面影を持った人。それが第一印象。食えない笑みを浮かべた目の前の男はこの支部の支部長だという。


「さて、少し質問したい。
あのオペレーションをする際に使う機械、素人では到底扱えないものだ。片腕を失くした君なら尚更。
どこかでオペレーターの経験が?」

『初めて。
でも家に今日扱った機械によく似たものの事を書いたノートがある…ます。それを幼い頃からよく見ていたので』


母の形見。
母がよく書いていたノートで、仕事でのミスの事、機械の扱い方などがビッシリと書きしめてあるもの。
もしかしたら母はここで働いていたのかもしれない。


「…そうか。
君のオペレーションは素晴らしかった。ベテランのゴッドイーターに物怖じしない態度、的確な判断、正確な報告。
どうだろう、オペレーターとしてここで働かないか」


拒否権はないような口調だ。
ここの人達は私が居住区へ戻る事を快く思っていない。今与えようとしている仕事も私を戻さない為の手段の一つなのだろう。


『考えさせて下さい。
私には人の命を預かる仕事は重すぎる』

「…成る程、素晴らしい。
一度オペレーターを経験しただけでそれが分かる人物は中々いない。
分かった、無理強いはしないでおこう。良い返事を期待しているよ」


オペレーターは命を預かる仕事。
私がイヤホンを付けた時、聞こえたのは少し焦った声。根暗フードだったから大事には至らなかったが、他のゴッドイーターだとどうだろう。敵の出現予定も迎えの到着時間も分からずに混乱に陥るに違いない。
それは私が今日実感した事である。
そんな重大な仕事、覚悟がない人間がやっても仕方ない事を分かっているからこそ支部長も無理強いしなかったのだと考える。


「あともう一つ。
ソーマの事だが、つい先程帰還したそうだ。
任務場所では君が伝えてくれたアラガミの他に中型二体、大型一体が出現。もし君がソーマを呼び戻してくれなければ、彼は良くて重症を負っていただろう。君の判断は的確だった。
オペレーターの件、よく考えておいてくれ」
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