詰め合わせ
□短刀達とおじいちゃん
1ページ/1ページ
「あるじさま!いっしょにあそびましょう!」
『あ、ごめんね今剣ちゃん。少し仕事が溜まってて…』
目を輝かせながら私を誘ってくれた今剣ちゃん。その申し出を断るのは胸が張り裂けそうだ。でも報告書がかなり溜まっている、明日提出のものもあるから今やらないと冗談抜きで詰む。
「どうかしたのか、主」
「おじいちゃん…今剣ちゃんに遊ぼうと誘われたんですけど、仕事が溜まってて遊べないんです」
「ふむ、なら俺と遊ばないか?」
「え、いいんですか⁉︎」
『いいんですか⁉︎おじいちゃん!』
思わず私まで聞き返してしまった。だって、おじいちゃん(三日月宗近)が体力有り余る短刀達と遊ぼうとするなんて意外すぎて…遊べる範囲はお手玉やけん玉くらいかなと思ってた。
「はっはっは、俺も暇をしていたからな。今剣や、主ではないが俺でよければ一緒に遊んでくれるか?」
「もちろんです!」
今剣ちゃんはおじいちゃんの手を引っ張って庭へ向かった。ありがたや、おじいちゃん。
自室の襖を全開にして報告書を書きながら、庭をチラチラと見てみる。
思わぬゲストに短刀達も大喜びで、小夜ちゃんも心なしか嬉しそうな顔をしている。
本当にありがとう、おじいちゃん。今度、美味しいお菓子をお礼に持っていきます。
因みに、遊びは鬼ごっこに決まったらしい。
『あ、おじいちゃんが鬼か』
おじいちゃんが数を数え、短刀達が逃げていく。さぁ、身軽な短刀達に追いつけるのか。駆け足の態勢に入ったおじいちゃんの顔はのほほんとしていた…が、一瞬その笑みが固まったように見えた。
思わず手に持っていた筆を机に置き、ジッとおじいちゃんを見つめる。……動かなくね?
「おじいちゃん?」
乱ちゃんが一歩も動かないおじいちゃんを心配して彼の元へ戻ってきた。それに続いて他の子達もワラワラと戻ってくる。なんて優しい子達!
感動しているのも束の間。事態に動きがあった。おじいちゃんが何か話すと、場の空気は一気に静まり返る。え、なにがあったの?
「大将!」
『ちょっと待って、薬研くん。まさか…』
「そのまさかだ。腰が抜けてる」
『おじいちゃんんんんんっっ‼︎?』
腰が抜けたって、まさかギックリ腰ですか⁉︎刀が⁉︎昨日まで戦場に出てピンピンして戻ってきたじゃないか、あんた!
「す、すまんな」
「謝るなよ、三日月の旦那。出陣続きで疲れが出たんだ。遊んでくれようとした旦那の気持ちだけで俺っち達は充分だぜ」
薬研くん、君は労わりのプロか!でもね、その話し方だと出陣させすぎた私が悪いって事になるの気付いてる?一気に申し訳なさが襲ってくるのは気のせいではないはずだ。
とりあえず皆で布団の上におじいちゃんを寝かせて、本体は手入れをしてみた。するとあら不思議、翌日にはギックリ腰は完治していたのだ。…改めて、どうなってんだろ。刀剣男士って。ギックリ腰も怪我のうちなのか?
一応、この一件も報告書に書いとこう。あとおじいちゃんには暫く休養を取らせよう。