詰め合わせ

□これがツンデレですか
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「いつにも増して酷い顔ですね」

『…徹夜明けの主に対しての第一声がそれ?』


もう少し労ってくれてもいいんですよ。

そう後に言えば、奴は小馬鹿にするように鼻で笑った。
宗三左文字は初期刀の清光くんを除いて、初めてこの本丸に来てくれた打刀である。奴は会った時から私を馬鹿にするような事ばかりを言う。弟の小夜が来てからは少し穏和になったものの、態度は変わらない。


「僕は正直な事を言ったまでですよ。第一、貴方が仕事を溜め込まなければ徹夜なんてものしなくてもよかったんじゃないですか」

『どうしよう。何も言い返せない』


ほら、また笑った。勿論、悪い意味で。
小姑のように私の注意する点を粗探しする彼。もしかしなくても好かれていないのは分かっていた。
私と鉢合うごとに籠の鳥やら、侍らせたいのかやら連発する彼を私は比較的自由にさせている。近侍にする事は滅多にないし、出陣してもらうときも小夜ちゃんや薬研くんが一緒だ。

しかし日が経つごとに当たりが冷たくなっていくのは何故だろう。


「まったく、あの刀も甘いですね。何故こんな主に何も言わず黙っているのでしょう。
彼を近侍にするのは貴方の甘えなのではないですか」

『……そーですね』

「…おや、言い返さないんですか?」

『別に。太郎さんが甘いのは事実ですし、私も甘えているところがあります。
…私がもう少し、しっかりしないといけませんね』


一つ仕事が終われば、また仕事は来る。恐らく数時間後にはまた政府からメールが届くはずだ。
私は審神者。皆に力を貸してもらい、彼等をサポートするべき存在。この本丸の大黒柱。もっと、もっと頑張らないと。


「なら、その隈くらいなくしてくれませんか?」

『隈…出来てます?』

「ええ、くっきりと。みっともないので早く寝て、なくして下さい」


言いたい事だけ言った彼が立ち去った後、ふと目に入ったのは少し冷めた茶だった。彼が座っていた位置にあるお茶。そういえば彼は立ち去るまでずっと両手を後ろに隠していたっけ。

…まさか、置いていった?私に、あの宗三左文字が。


『…まったく。素直じゃない付喪神様ですね』


もしかしなくても好かれていないのは分かっている…けど、そこまで嫌われていないと自惚れてもいいでしょうか。

置かれた茶を飲むと口一杯に渋みが広がる。燭台切さんや歌仙さんが淹れたお茶ではないと分かると、私の口元は更にニヤけた。多分、宗三さん自ら淹れてくれたんだろう。
宗三さんが茶を煎れる姿なんて、想像しただけで笑みが浮かぶ。

ああ、なんだか良い夢が見れそうだ。

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