いのち 内容

□むっつ
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何とか這いずって家に戻って療養をしている内に、次第に足は動くようになった。

しかしこれは私の体が治ったのではない。

下半身を鬼に譲ることで動くようにしただけだ。

格段に鬼と同化する時期は早まるだろうが、こんなところで弱ってゆくよりはましだと考えた。

杖をつきながら久しぶりに屋敷の外へ出てみると、人影が全くない。

すぐに、理解ができた。





(国が、滅んだのか)





無惨な姿で倒れる死体。

混乱の中火事が起きたのか、炭となって崩れ落ちた家々もあった。

国主の住まう城へ入る。

あちらこちらちに、恐怖の顔のまま絶命した人が倒れていた。
最奥の国主の部屋。

目を見開いたまま倒れる国主の傍らにより、瞼を閉ざした。

たった一体の鬼によって、国が滅んだのか。

生き残ったものも国の外へ逃げたのだろう。

私が仕えるはずだった国主に頭を下げて、屋敷へと戻った。


閑散とした街をゆっくり歩きながら、私の心中では今後どうするべきか考えていた。

仕えるべき主も、守るべき家ももうない。

鳥が西へと飛んでゆくのを眺めながら、漠然と思う。







私も足がもっと動くようになったら、どこか遠くにいこう。





そして、やがて鬼になるその時まで、人里離れて穏やかに暮らそう。







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