ラクサス

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「……ひゃあ!」


破壊音の中に高めの人間の声がした。

誰もいないものだと思って放ったのだが、ラクサスの気付かないうちに接近していたものがいたらしい。


「…………チッ」


もし今の雷が当たって後で騒がれても困る。

ラクサスは、苛立ちながらもしぶしぶ声のした方へと歩いていった。


木と木の奥へと入ると、小さな子供がなぜかひっくり返った状態で制止していた。

ワンピースの裾がめくれ上がってウサギ柄のパンツが丸見えになっていた。


「なんだお前」


思わずそう言ったラクサスに、ウサギパンツの少女はピクリと反応した。

急に勢いをつけておき上がり、ラクサスを凝視した。


「今の、まほう!?」


服に草やら泥やらがついているのも気にせず、
キラキラと目を輝かせた少女に驚きながらラクサスが頷くと、更に興奮したように身を乗り出してくる。


「すごいすごいすごい!初めてこんなに近くで見たぁ!」


このマグノリアに住んでいて今更魔法に驚く少女の方が、ラクサスには奇妙に感じた。


「お兄さんラクサスって言うんでしょ!?お母さんに聞いた!
ねぇねぇねぇラクサスー私も魔法使いたい!」

「勝手に呼び捨てにするんじゃねぇよ」


威嚇する意味も込めてラクサスは刺々しい言葉を返すが、少女にダメージを受けた様子は全くない。


「わかった!じゃあラク兄ね!私はね……オーレリアって言うんだよ!」

「…………あっそ」


ひたすらニコニコしながら聞いてもいない事をしゃべるので、あきれたラクサスはそれ以上突っ込まないでおいた。


「今の、ズバーッ!ビビビー!ってなるの どうやるの?根性?」

「根性だけで魔法使えたら苦労しねぇよ。つーかお前……」


ラクサスがスン、と鼻をならす。


「魔力の臭いがしねぇし、魔法、使えねぇだろ」

「えぇぇぇ!!」


幼い少女の全力の叫びに、ラクサスは耳を塞いで「うるせぇ」と文句を言った。

しかしオーレリアはそんなのまったく気にしていない。


「やだやだ魔法つーかーいーたーいー!」

「ンなこと言われたって知らねぇよ」


駄々をこね始めたオーレリアに面倒くさくなってきたラクサス。

ため息をついて、宥めるのもなげやりになる。


「別に魔法じゃなくても強くなる方法なんていくらでもあるだろ」

「ほんとっ!?」

「…………知らね」

「魔法じゃなくてもビリビリだせる?」

「いや、雷は無理だろ」

「えー……じゃあ、ビリビリに勝つくらい強くなれる!?」


子供らしい必死の形相で聞いてくるものだから、ラクサスは思わず知りもしないのに

「…………あるんじゃねぇの」

と答えてしまう。

ラクサスの言葉を信じ込んだオーレリアは、ピョンピョンとびはねた。


「じゃあ私、ビリビリ跳ね返せるくらい強くなるー!」


魔法を使いたいと駄々こねた割に、ずいぶん早く立ち直った。


「それでーラク兄よりも強くなる!」


ズビシィ!と宣戦布告されたラクサスは眉をひそめた。


「はァ?なんで俺なんだよ」

「だってビリビリ出したのラク兄でしょ?だから勝つのー!」

「めんどくせ……」


テンションの高いオーレリアて反対に、ラクサスはどんどん疲れていく気がする。


「ラク兄跳ね返したら私、さいきょうだと思う!っきゃー!」


自分の妄想に自分で興奮して、走り回っている。

ラクサスはコイツに負けるのだけは絶対にないと思った。

オーレリアが振り返って大きく笑った。


「ぜーったい、魔法使えなくたって、ラク兄みたいにつよくなるよー!」

「あーはいはい、やれるもんならやってみろ」







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