ラクサス

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そして、翌日。

予定の時間少し前。

エリオスに指定された妖精の尻尾の訓練場へ重い足を運んだオーレリアは、ギルドの門をくぐるなり絶句した。


(なに、この人の量……!?)


妖精の尻尾の魔導士はもちろんマグノリアの一般人や、オーレリアの同僚の剣士たちまで、これから祭りでもあるのか、というほどの人の多さ。

オーレリアはおもわず額に手を当てた。

おそらくあの後、エリオスがあちこちで言いふらしたのだろう。

傭兵ギルドが近くにあるということも影響して、マグノリア周辺には剣士のいる割合が高い。

その中に、旅生活が長く、人好きのするエリオスの知り合いもいて、そこから噂が広がってしまったに違いない。

ここまでの大事になるとは思ってもいなかった。

オーレリアは切実にこのまま帰りたいと願ったがそれもむなしく、オーレリアを見つけたエルザに為すすべもなく連行されてしまうのだった。




「おはようオーレリア!なんかすごいことになってるな!」


オーレリアより少し遅れてやって来たエリオスが、明るくオーレリアの肩を叩く。

そんなエリオスを、オーレリアは少しふくれて睨みあげた。


「……エリオスが言いふらしたからじゃないの?」

「いや別に言いふらしたわけじゃないだろ。なに話してたのか聞かれたから答えただけだし」

「大して変わんないよ、もう」


すねるオーレリアを気にした様子もなく、エリオスは満足げな顔で胸を張る。


「まぁでもこれでアイツも、オーレリアがどんだけすごい奴かってことがわかるだろ?」

「そんなの必要ないのに……。だいたい、なんで私よりエリオスの方がラクサスさんにこだわるの」

「そんなの、お前の昔を知ってるからだよ。むしろ俺は、あんなにアイツに執着してたくせに弱腰のお前が納得いかないんだけど」

「ちょっと、あんまり大きな声で言わないでよ」


エリオスの口をふさいでオーレリアが辺りを見回す。

幸い人々は、宴の予感に浮き足たってふたりの会話は聞いていないようだ。

オーレリアの手を引き剥がしたエリオスは文句を言おうとして、ふとなにかに気づいたように視線をオーレリアから離す。
それにつられてエリオスが見ているものを確認し、頭を抱えたくなった。


「おっ、ラクサスも来たみたいだな」


これまで数々の闘いを乗り越えてきたオーレリアは、この時はじめて、敵前逃亡を考えてしまったのだった。







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