ラクサス

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「いいか、修行サボるんじゃねえぞ!」

「はいはい」

「次こそは勝つからな!」

「期待してますー」

「余裕こいてるとすぐにおいこすぞ」


カルディア大聖堂の前に、エリオスとオーレリアがいた。

再び旅に出るエリオスを見送るためだ。


「あんまりラクサスにうつつを抜かすなよ!」

「余計なお世話です!」


一言余計なエリオスの頭に拳を落として笑い合う。

こんなやりとりもオーレリアには久しぶりで懐かしかった。

少しだけ名残惜しさを感じたが、エリオスの方はそんなことなど思ってもないのか、清々しく別れを告げた。


「それじゃ、またどっかでな」

「知らないうちに死なないようにね」

「お前に勝つまでは死なねーよ!」


大きくてを振って東へと遠ざかってゆくエリオスを、見えなくなるまで見送った。


「………ふぅ」


エリオスがやって来て2日ほどしか経っていないが、随分賑やかな時間だった。

慣れた笑い声が聞こえないことに少しだけ寂しく感じつつ、そんな自分に苦笑いをする。


突然、背後に気配を感じて振り替えると、ラクサスがが立っていた。


「あいつ、もう発ったのか」

「はい……あの、どうしてここに?」


たしか今朝、ラクサスが一人で仕事に行ってしまったとフリードが嘆いていた。

オーレリアはてっきり遠くに行っていると思っていたラクサスがなぜこんなところにいるのか、首をかしげた。


「あー……」


ラクサスが言いにくそうに首元に手を当てる。


「ここの司祭の雑用だ」

「はい?」


雑用?あのラクサスが?と顔全面で表現してしまう。


「司祭に借りがあんだよ。……昔、教会ぶっ壊したから」


一体なんでラクサスがそんなことを、と興味が湧いたが、言いにくそうなラクサスの様子にオーレリアは黙っていることにした。


「お手伝いしましょうか?」

「いや、いい。どうせもうすぐ終わる」


ただの荷物運びだしな。とぼやくラクサス。

いつも威厳のあるラクサスをイメージしていたので、オーレリアにはそんな彼が新鮮に思えた。


「そういやぁ……思い出したぜ」

「え?」


急にニヤリとしてオーレリアを見たラクサスに首をかしげる。
「オーレリア。聞いたことあると思ったが、あん時のガキだったとはなぁ」

「!!」


からかうように笑いながら話すラクサス。


「お、思い出したんですか?」

「おう。ずいぶん大人しくなったな」

「…………あぁぁーーー」


頭を抱えてオーレリアがうめき出す。

手で顔は覆われているが、隠れていない耳は真っ赤になっているのが見えた。


「すいませんでした……。なんか、変なのに付き合わせてしまって」

「いや、面白かったぜ」


指の間からラクサスを覗き見るとまだニヤニヤしていて、オーレリアは昔の自分の奇行を忌々しく思った。


「しかし、あんなのがきっかけでよくそこまで強くなったな」

「それくらいラクサスさんの魔法が衝撃的だったんですよ」


やっと顔を上げたオーレリアは暑いと言うように手で火照った顔をあおぐ。


「で、俺の雷は跳ね返せたか?」

「はは、まだ足りないみたいです。やっぱりラクサスさんの雷は強烈なんですよ」


そうかい。と答えたラクサスは傍らに置いていた荷物を担ぎ上げた。


「それじゃ、期待しとくぜ。お前が雷跳ね返すの」

「はい。必ず」


ひらひらと手を振ってラクサスは大聖堂へと去っていく。

その後ろ姿を見つめるオーレリアの表情は、決意したように引き締まり生き生きとしていた。






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