いのち 内容

□ふたつ
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「なーあーっいい加減クエスト内容教えてくれよー」

「それは了承しかねるな」




袴にすがりつきずるずると引きずられるナツを、ヨタカがあきれたような目で見降ろす。




「いい加減諦めてギルドに帰ったらどうだ」

「それは絶対ない!」




キッと表情を険しくして断るナツに、ヨタカは本日何度目か分からないため息を吐いた。

すでに、ナツがこの家に来てから2週間がたっていた。

いい加減ギルドの者たちが怪しんでもおかしくない日数だ。




「ナツ」

「なんだよ俺は帰らねェぞ!」

「分かったから。ところでお前、ギルドには事情を伝えたのか?」

「……………あっ」





さっと顔を青ざめさせたナツに、(やはりか)とヨタカが呆れる。





「うちに通信用魔水晶はないから、一度ギルドに戻って事情を説明して来い」

「……そう言って俺をギルドに帰すつもりじゃないだろうな」

「大丈夫だから。まあ戻るついでに誰か大人を連れてきてくれたらいいんだがな」





ふっと笑ってナツを見下ろすと、挑戦的に睨み返してくる。






「……本当に、戻ってきていいんだな?」

「大丈夫だって」

「……なら、俺いったんギルドに帰るから」

「うん」





安心したように笑うと、ナツは部屋の奥に駆けていって荷物を取ってくると、
「じゃあ行ってくる!」と言ってあっという間に家を出て行ってしまった。




「………行動が速いな……」




呆れたようにそう呟いたヨタカの口は、緩やかに弧を描いていた。
















ナツが出てから数時間がたった。

ずいぶんと気軽にナツは出て行ったが、
実は妖精の尻尾のあるマグノリアからこの家まではかなりの時間がかかる。

久しぶりに静まり返った家で、ヨタカはゆっくりと茶をすすりながら休息を取っていた。





(……2週間でも、慣れるものだな)




いつの間にか自分があの騒がしさが当たり前になっていたことに気付き、
ふと自嘲気味に笑う。





(もう時間がないというのに、何をやっているんだ、私は)




ことり、と湯呑を机に置いて息をつく。



その瞬間、ヨタカの動きが止まった。



鋭く細められた目は壁の向こう側を見据えている。





(……やはり、そろそろ一掃した方がいいか)






静かに目を閉じて耳を澄ます。






(この2週間全く片付けられなかったからな。今のうちにやっておくか)







常人がその場に居ればただ静寂があるばかりだが、
ヨタカの耳は周辺の森をうろつく魔物たちの足音をとらえていた。




衣擦れの音をさせながら立ち上がり、ヨタカは草鞋も履かずに縁側から外に出たのだった。











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