いのち 内容
□むっつ
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目を覚ますとすでに夜が開けていた。
「……………生きてる」
あの出血量ならとうに死んでるはずなんだが。
その疑問はすぐに晴れた。
「お前か。……皮肉なものだな」
私の体に棲む鬼は、私が死ねば共に死ぬ。だから私を生かしているのだろう。
さすがに腹の穴はまだ塞がりきっていない。
しかしそこで違和感を感じた。
何で痛みを感じない?
あれだけのけがを負って、まだ治ってもいないのにまったく痛まないのはおかしい。
それに上半身は普通に動くのに、下半身はピクリともしない。
なんとか腕で体を持ち上げ自分の体を見て、合点がゆく。
(脊髄を痛めたのか)
ごろんとまた寝転ぶ。
朝の空気を吸って、目を閉じた。
(……なにも出来なかった)
父の、あの鬼の圧倒的な力を前に、私が今までやって来たものはなんの意味もなさなかった。
己の不甲斐なさに、涙も出ない。
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