love and sin

□ III 新たな始まり
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「___い、アンタが___しなさ__。」
「ハァ、__で___しなきゃ__の。」
「_、食べ__い?」




3人ほどだろうか。
微かに聞こえる声が近づいてくる。







「もう、しょうがないなぁ。」

そう言って現れたのは1人の綺麗な青年だった。



「うっわー、ぐっちゃぐちゃだねww
あんた気が付いた?
っても、まだ喋れないか。
ひとまずこれ食べなよ。」



渡されたのは紅い石。
普通なら石を食べようだなんて思うはずがない。
だけどそれはとても美味しそうで
私は迷わす口にした。




「…………あ、おいし…。」



美味しい。
こんなに美味しいものは食べたことがないような気がする。

私は一粒じゃ足りなくて
次々とその石に手を伸ばしていく。




「あんたそんなにこの石のこと気に入ったの?」


「うん、美味しい。これ何?」


「あはははっ。あんたにいいこと教えてあげる。
これは賢者の石って言って、
簡単に言うと、何百人もの人の命でできてんの。」


「ふーん、そうなんだ。」



話をしている間も、石を食べるのは止まらない。




「はぁー………、あんたそれ聞いて何にも思わないの?
元は人間でしょ。
そろそろ記憶も戻ってきたんじゃないの?」


「記憶戻ったけど私、人間とか嫌いだし。
それに、賢者の石が人間の命って言われても実感ないから。」



そう、
私はえりに殺されたんだ。
結局どの人間も同じだった。
人間なんて大嫌い。



「へぇ、さすがホムンクルスになるだけあるね。
あんたのこと、これからも世話してあげてもいいよ。」


「ホムンクルス……?
私、人間じゃないの?」


「人造人間てこと。
あんたはもう人間じゃない。
もちろん僕もそうなんだけど。
まぁ不老不死みたいなものかな。
体の中の賢者の石を使い切れば死んじゃうんだけど、
何かしらの能力が使えるし、
人間とは違って弱くないよ。」



私はその言葉を聞いて安心した。
死ぬ間際の願いが叶ったんだ。



「ほかに聞きたいことある?
特別に答えてあげてもいいよ。」

「あなたの名前を教えて?」

「僕はエンヴィー。
嫉妬のホムンクルスだよ。」

「エンヴィー……。
私の名前はね、
………あれ、………思い出せない。」




あれっ……
私の名前ってなんだろう………。
確かにあったはずなのに
それだけが思い出せない。




「あっははは。
自分の名前が分からないのはしょうがないよ。
あんたはまだお父様に名前を教えて貰ってないからね。」

「お父様?」

「そう、あと一週間もしたら会えるんじゃない?
気づいてないかもしれないけど、
あんた今はぐっちゃぐちゃだからね。
綺麗になったら会えるから、
それまではここで大人しく石食べててよね。」


エンヴィーはそれだけ言うと
部屋から出て行った。






能力のこととかよく分からないことが沢山あるけれど、
この新しい命がホムンクルスとして
始まったことが嬉しい。





というか私、今そんなにぐっちゃぐちゃなんだ……。
   
   
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