love and sin
□V 能力と恐怖
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僕らしくない。
グルームがあのオバハンにくっついて、笑っているのを見るとイライラする。
思わず抱き上げて、引き離した。
それに昨日だって、あのオッサンに触られてるのを見て、腑が煮えくり返るような気がした。
このエンヴィー様を此処までイライラさせるなんて、マジありえない。
だけどグルームのことは嫌いじゃない。
「あーー、本当意味分かんない、ムカつく!」
「いきなりどうしたの?
というか、そろそろ降ろして。
恥ずかしいわ。」
「っああ。別に何でもないよ。
外行くからそれらしい格好しなよ。」
なんだかエンヴィーがおかしい。
だけど、まぁいいかと思い部屋から持ってきたコートを羽織ってついていく。
いつの間にかエンヴィーは変身していて、何処にでもいるような人間になっていた。
「うわあ、エンヴィーって変身できるんだ。すごいね!」
「うん、でしょ?
あんたは物質に干渉できるとかなんとか言われてたけど、結局何ができるんだろうね。」
「うーん、私もまだよく分からないの。あ、だけど一度触れて、内部に干渉した相手になら変身できるってお父様が言ってたわ。」
「へぇ、じゃあさっき抱きついてたし、ラストになら変身できるんじゃない?」
「そっか、ちょっとやってみるね。」
私は意識を集中させて、ラストに触れたときの感覚を思い出す。
ペキ…ペキペキ
「ふぅ。どう?できてるー?」
「うん、いいじゃん。
相手に触れないといけないのは面倒くさいけど。
でも、僕はそんなオバハンの姿より、いつものグルームの方が可愛くていいな。」
「そう?ラストの胸大きいし、色気あるから羨ましいんだけど……。」
可愛いなんて、人間のときに何度も言われた言葉だったけれど、エンヴィーに言われると何故か照れくさくて、顔が赤くなるのを誤魔化すように戻る。
変身するのに比べて戻るのは簡単だった。
*****
外に出てみて分かったことは、
自分が生まれ変わった世界は前とは違う世界だった、ということだ。
薄々気が付いてはいたけれど、
実際に目の前で錬金術を見たりすると、
本当に違う世界なんだと実感する。
錬金術で大概のことができるせいか、
街並みは古く、文明は前の世界と比べて、あまり発達していないと分かった。