めいん

□あり得ないこと
2ページ/5ページ

「どうかしたんですか?」



ジョッキをテーブルに置いてさっき入ってきたお客さんに声をかける。


「あぁ、嬢ちゃんかそれが、……」



「……はい?」



話を聞くと、先程おじさんに聞いた錆びた鎧の騎士についてだった。


どうも、最近噂になってるらしい。


カウンターでジョッキを洗いながら、グルグルと考える。


またなんで鎧?

なにしに来たんだろう…


そういえば、王様が病気とかなんとか…

…関係ないか


「んー、なんだろーなぁ」


「…おーい」


「ん…?」



パッと顔を上げると、洗ったジョッキや酒瓶が浮いていた

それらは私の回りをフワフワと…


フワフワと?



「うわぁぁっ!ご、ごめんなさいぃぃ!」


力を緩めると、浮いていた物が一気に床に落ちていく。

落ちていくとは、言葉どうり重量に逆らい酒瓶達が落ちる。


つまり、

ガジャン、と音を響かせ瓶が割れていく。


=お酒が無駄になる。


「わぁぁっごめんなさいぃぃ!」


「わかったから、落ち着け」



真顔で酒瓶を片付けるメリオダスさんを、私はボーッとみていた。

お客さんはお客さんで、また始まったと笑っていた。


そう、私にはどうしてか物を浮かせる力がある。


触れたもの限定、人は1人が限界だけど、なにかと便利なのはいいが、無意識に浮かせてしまうことがあるので

そこはちょっと不便だと感じていた。



「ケガはねぇな」

「あ、はい…」

「いつものことだ、きにすんな」


いやいや、気にしますよ。マスター。


はぁ、とため息をひとつ。


とりあえず首をふって、頬を叩く。
ボンヤリしちゃダメっ、今は仕事中なんだからっ。


よしっ、と渇を入れたところでお客さんの話し声が聞こえた。



なんでも、店に貼ってある手配書の七つの大罪についてだ。


10年前、王国全土に集められた聖騎士が何十人も殺された、という事件。



「七つの、大罪」


チラリとメリオダスさんを視界に写す。

それに気づいたのか、なに食わぬ顔で、

どうかしたか?とまた私に声をかけていた



「なんでもないですよ」


にこりと笑い、ジョッキを両手にその場をそっと離れた。


その後ろ姿を、ジッと見つめていたなんて私は知らない。




きっと彼は、七つの大罪。…だと思う


名前がおんなじだからそう思ってるだけで、確信なんてこれっぽっちないけど。


でも私はそんなこと、どうでもいい。


どんな人でも、私を助けてくれた人にはかわら変わらない。



そんなとき、ドンッッ、と建物が揺れた。


勢いよく、ドアが開けられたからだ。



「「で、でたぁぁ!!」」


お客さんの悲鳴にも似ている声とともに、ドタバタと人が出ていってしまった。


勢いよく人が出ていくので、誰かの足に躓き、尻餅をついてしまった。


「いっ〜っ!」



あまりの痛みに涙が出そうになっているとき、ふと私のに大きな影がかかった。


そーと見上げると、朝に散々話にでた錆びた鎧の騎士がたっていた。


「え、えぇぇぇっ!」


口をパクパクとしながら鎧の騎士を見上げると、私の隣にメリオダスさんが仁王立ちしていた。


「お前、誰だ?」



メリオダスさんが口を開くと、鎧の騎士は糸が切れたかのように倒れていった。


「え、女の子?」



倒れた拍子に鎧の頭の部分がハズレ、中の人の顔がみえた。




騎士の中にいたのは、長い銀髪をもった1人の女の子でした。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ