愛しい人【完】<リク>

□愛しい人
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3時限目が終わり、4時限目は体育だ
体操着を片手に更衣室へと向かう

先に着替えを済ませ、真ん中に設置されているベンチへ腰を下ろす
着替えが終わった奴らが、更衣室を出ていく
まばらになったタイミングで泉が入ってくる

俺はスマホをいじるふりをして、泉の着替えが済むのを待つ
ロッカーが閉まるのを見て、俺もスマホをロッカーの中に投げ込む


「今日バスケだって」

「アキラは得意ですからね。俺は怪我しないように気を付けますよ」

「見学してたら良いじゃん」

「いいえ、出来ることはします」


チャイムが鳴り、みんなが整列する
チーム分けされて、俺が先にコートに入る
泉はボールの入った籠を押し、コートの外で端に転がっているボールを片付けていた

先生の笛を合図に試合が始まる

俺は試合中だってのに、時たま泉を探してしまう
だから球がこっちに飛んできたのに、相手チームのガタイの良いバスケ部員にとられてしまった
その勢いのまま、コートから出て外で見ている人へと突っ込んでいきそうだ


その先に泉の姿を見つけて、俺は気が付くと勝手に足が動き出していた


ガシャ――ン・・・・・・
 

間一髪で泉を腕の中に収める
腕が床に擦れて熱い
泉が眼鏡の蔓をかけ直し、身体を起こす


「・・・っ」

「大丈夫か?」


周りの生徒も駆け寄ってくる


「大丈夫です」

「おいアキラの腕、血出てるぞ」

「いや、こんくらい大丈夫だから」


擦れて切れた腕を見ると、自分が思うより多く出血していた


「泉、お前が神生を保健室へ連れてってくれ」

「・・・ハイ」


先生の言葉に泉が立ち上がろうとする
一瞬止まってからスクッと立ち上がったように見えた


「行きますよ」

「あ、あぁ」


体育館を出て、保健室と向かう
保健室の扉に『不在』の札が下がっている
泉はその扉を開け、中に入り消毒液が入っている棚に向かう
手に消毒液を持ち、何かを探している所を俺は二の腕を掴み、ベッドへ無理やり引っ張り座らせた


「っ・・・アキラ、なに・・・」


俺は泉の前に跪く
そしてあまり力を入れないように、泉の左足首を掴んだ


「・・・っ!!」

「壁とカゴの間に挟んだんだろ」

「大丈夫です。・・・平気です」

「俺は大丈夫じゃない」

「だから先にアキラの手当てを・・・」

「違うだろ!そうじゃねーよ!」



俺には泉の全てを見せて欲しいのに・・・


まだ泉は俺に隙を見せたくないんだ





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