2015年<リクエスト作品>
□五色遊戯
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授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く
いつもの様に教室の掃除を済ませ、部室へと向かう
廊下を曲がると、部室の前にはアキラが立っていた
2番目に部室前に着いたパクが、アキラの背後に立ち驚かそうとしている
「おいパク!見えてるぞ」
「・・・なーんだ、面白くないの。・・・・・・アキラ先輩、中に入んないんですか?」
「入れねーんだよ・・・おかしいな、カギは職員室に無かったから、誰かが持って来てて部室に入れると思ったのに・・・」
「えー、入れないんですか?」
「仕方ねーな、もう一回職員室に行ってくるか」
「あ、俺も暇だから付いてこーっと」
「え、じゃあお前行って来いよ」
部室前で騒いでいた2人は、結局2人で職員室へと向かった
職員室の鍵が掛かっている棚をもう一度調べる
やっぱり入ってない
「・・・・・・やっぱ、無い」
「・・・・・・誰ですかね」
棚の前で2人が凝視していると、他の先生が声をかけてきた
「お前たちの部室の鍵なら、九瓏先生が持って行ったよ」
「え!本当ですか?」
「あぁ、でも・・・化学室にやり残したことがあるとか言ってたな・・・」
「分かりました。ありがとうございます」
2人は教えてくれた先生に頭を下げ、職員室を出る
「もう、先に鍵渡してから化学室に行ってくれたらよかったのに」
「ほら、先生思いついたら周り忘れるタイプだから」
「・・・・・・言いつけよーっと」
「えぇ!?だってアキラ先輩だってこの前言ってたじゃないですか!」
「・・・・・・さぁ?」
「酷いですよぉ・・・・・・」
そんな会話をしながら、化学室へと向かう
階段を上がり、化学室の前へやってくると、アキラが扉を開けて先生を探す
どうやらいつもの準備室の方にいるようだった
アキラとパクは互いに目を合わせ、先生への悪戯を思いついたようだった
静かに教室へ入り、少しだけ開かれた準備室へ向かう
すると先生の声が漏れてきた
「・・・・・・ったんだ。だからって俺にこんなもの押し付けたって・・・・・・お遊び用の媚薬に・・・・・・」
媚薬と言う言葉にアキラとパクは目を合わせた
パクが小声でアキラに耳打ちをする
「先輩、今先生が“媚薬”って・・・」
「俺にも聞こえた」
また2人は聞き耳を立てる
「じゃあこれは俺が処分するから・・・・・・」
アキラが先生の電話が終わるのを待っている
媚薬の話で先生をからかうつもりだ
そんなに時間もかからず、先生が電話を切った
そのタイミングで準備室の扉を勢いよく開ける
「先生!!」
「わぁっ・・・・・・アキラ、パク・・・」
「・・・・・・」
先生が慌てて何かを白衣のポケットに隠そうとしていた
パクが何か口を出そうとするが、アキラがそれを止める
「先生、部室の鍵がなくて困ってんだけど」
「あ・・・鍵ね・・・鍵」
先生の机の上に部室の鍵は置いてあった
それを手に取りアキラに渡す
「先生、ここのゴミまだ捨ててないみたいだから、俺らで行ってこようか?」
「あぁ・・・そうだな。お願いするよ」
明らかに先生は動揺している
でも2人が何も言って来ない事を確認すると、話は聞かれていなかったと判断したようだった
「じゃ、捨ててきまーす」
「頼んだぞ」
そのまま化学室を出て、焼却炉へとアキラが歩き出す
パクがアキラの後を追い、不思議そうな顔で尋ねた
「先輩・・・先生の媚薬って・・・」
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