2015年<リクエスト作品>

□だまされたい
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「パクー!!知ってたか?今日から練習前の床磨きは1年の仕事になったんだ」

「え、そうなんですか?」

「お前、聞いてなかったんだろ・・・」

「・・・・・・いいえ」

「まぁ、そう言う事だから拭いといて」

「分かりました」


僕たちのやり取りを窓際で見ていた泉先輩とタツキ先輩が、僕に聞こえない声で何か話している


「・・・信じちゃったよ」

「馬鹿ですね。きちんと人の話を聞いてれば、こんな事にはならないんですよ」

「・・・止めないの?奏くん・・・」

「明日もやるようでしたら、教えてあげます」

「・・・それでいいの?」


そんな会話がされているとは露知らず、僕は床磨きに励んでいる
半分ほど拭き終わる頃、先生がやって来た

学校に居る間で、唯一一緒に居られる時間
僕にとって大切な時間

尊敬から始まった先生への想いは、いつしかふくらみだす
そして気づいたときには、どうにもならないくらい先生が好きになってた


「あれ?パク・・・今日床の当番?」

「先生・・・パクはね、この部の中での自分の立場を考えて・・・・・・」

「うるさいですよ、アキラ」

「ホンとはアキラくんがしないといけないのに・・・・・・」

「ええッ!そうなんですか?」

「パクは素直だからなぁ」

「先生、そう言ってパクを甘やかさないで下さい。だから人の話を聞かなくなるんです」


泉先輩が冷たい視線で僕を見る
僕だって聞いてない訳じゃないんだけど・・・・・・


「そう言うなって。パクも色々考えてるんだから、な?」

「・・・・・・いえ、スミマセン」


先生の暖かい手で頭をポンポンとされる
なんだか僕の事を違う視点で見ていてくれることが嬉しい
僕が甘えてるだけかも知れないんだけど


「でもパク、国語の先生が怒ってたぞ。宿題白紙で出したんだって?」

「ええッ!本当ですか?・・・・・・あれ?・・・・・・でも・・・・・・」

「すぐ信じる」


先生が笑いを堪えている
すぐにからかわれる
皆で僕で遊んでるんだ

でも、先生だけ特別


ずっと僕を見ていて欲しい





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