2015年<リクエスト作品>

□スプラッシュ サマー
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「・・・あ〜あ!!結局誰も手伝ってくれないんだから・・・・・・」



僕は今、たった一人で掃除をしている
しかもこの広い室内プールで・・・

天気も良く、窓のガラス越しにお日様が差し込んでる
ぽかぽか暖かく・・・ってよりも、蒸し暑い
蒸すというよりは、ジメジメだ

ズボンとシャツの裾を更にまくる
ブラシを持ちながら、僕は拗ねていた


本当に誰も来ない!


僕は今日の昼休み、丁度アキラ先輩と話をしていた
内容なんてなくて、他愛のないものだった
そして、そこに何故か落ちていた柔らかいゴムでできたボール
アキラ先輩がそれを手にした
軽く投げ合ってたはずなのに、いつの間にか強く投げたり、高く投げたり・・・・・・

もうこの時点でフラグは立っていたのに・・・
その回収率の速さと言ったら無い
見事、廊下の蛍光灯に直撃し、廊下は大惨事

そこに通りかかったのは奏先輩
割れた蛍光灯を見て、落ちた破片を目で追っている
更に、そこへ現れた教頭先生


「おやおや、怪我はありませんか?元気な事は大変良い事ですが、学校の備品を壊すのはいけませんねえ・・・」

「・・・・・・・・・」


物腰の柔らかい言い方で、僕たちの心配をしてくれる
そして更に続けてこう言った


「そうですね・・・罰として、プールの清掃をしてもらおうかな?」

「・・・・・・・・・」


あの時顔を見回したときは3人だったはずなのに・・・
今は僕一人だけ

奏先輩は勿論関係ないですから、除外しましょう
でも、アキラ先輩は?
・・・僕は納得できない

絶対逃げられたよね
僕だって、出来ればやりたくないんだから
それなのに・・・
こんな広いプールを一人でなんて・・・
考えるだけでお腹が痛くなりそう

プールの中には、15センチから20センチの高さで水が入っている
僕はその水を思い切り蹴って、持っていたブラシで後ろへと掻いた


「うわぁぁっ!!冷たっ・・・・・・」

「へ?」


突然の大声
僕は驚いて振り返った

タツキ先輩!
が、コンちゃんとずぶ濡れで立ってる


「わわっ!!先輩!ゴメンナサイっ、まさか誰か来るなんて思ってもなくって・・・・・・」


タツキ先輩が濡れた頭を振っている
どう考えても、それだけじゃ乾かない


「タツキ先輩、大丈夫ですか?」

「だいじょばないよ。僕もコンちゃんもこんなに濡れちゃった」

「本当に済みません。でも、どうしてここに来たんですか?」


金の髪から水滴がポタポタ・・・と落ちて行く
頬から顎に伝う滴
そんな姿のタツキ先輩から目が離せない

いやいや、何を考えてるんだ
そう思っても目が追ってしまうから困る
そんな僕を知ってか、タツキ先輩がブレザーの袖で顔の水滴を拭い始めた
それを見て、僕はようやく自分で用意していたタオルを渡そうと思い、プールを出ようとした


「あっ、ぱっくん、大丈夫だから」

「え・・・でも・・・」

「だって僕、ぱっくんのお手伝いに来たんだもん」

「えぇ!?」


思わぬ人からの思わぬ言葉
コンちゃんを抱きしめたままの笑顔
僕たち2人で大丈夫かなぁ・・・・・・










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