2015年<リクエスト作品>

□境界の向こう側
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消毒液の匂い
つまらないテレビ
しかも隣のおじいちゃんは、煩いほど元気だ


「・・・・・・暇だなぁ」


仰向けになったまま呟いてみる

することもなく、着信のない携帯を手に取った
今頃午後の授業が終わる頃だ
最初は学校行かなくて喜んだものの、3日も過ぎれば飽きてくる

俺は左足を天井から降りてくる器具に吊られながら背中を起し、窓の外を眺めてみた
広い中庭で散歩をする人達


「早く外で遊びてぇーなぁー・・・」


怪我をすると、健康な体の有り難みが良く分かる
こんなに良い天気なのに、俺はベッドから降りられないんだから

しばらくすると病室の扉が開き、見慣れた顔が覗きこんできた


「アキラ先輩ー!!」

「お!パク!」


大きく扉が開かれると、そこにはダンス部のメンバーと先生が次々に病室へと入って来た
沈んだテンションが一気に上がる


「おぉ‼アキラー、大丈夫か?」

「先生〜大丈夫じゃないッスよぉ」

「見たらわかりますよ。日頃から気を付けてないからこういう事になるんです」

「・・・俺、病人なんだから優しくしてよ」

「そうですよ!奏先輩。アキラ先輩、足ポッキリいってるんですから」

「ポッキリとか言うなよ!本当に痛いんだからな!!」


俺達が軽口を叩いているなか、俺の視線は一人を見ていた
向こうも心配そうな顔で俺を見ている


「・・・アキラくん、大丈夫?」

「タツキ先輩・・・大丈夫ッスよ」


コンちゃんをギュっと抱き締めて目を潤ませる
このまま抱き締めたい衝動にかられた
勿論出来ないんだけど


「足以外の擦り傷は目立たなくなったな」

「自然治癒力ハンパないみたいでさ。このままじゃ足の方も治り早いかもって病院の先生が言ってたくらいだよ」

「でもアキラ先輩、今時猫を助けて怪我するって少女漫画に出て来るヤンキーみたいでダサくないですか?」

「・・・うるせーよ」

「それで自分が怪我してたら世話ないですよね」

「ホントにお前は容赦ねーよな・・・」

「叱咤激励です」

「ハイハイ、ありがとうございます」


皆と話できるのは嬉しいけど、これじゃタツキ先輩とゆっくり話は出来ない


「それじゃ、アキラも疲れるからこの辺で帰るぞ」


先生の一言で皆立ち上がる
入り口に立ち手を振り出ていく
最後に出ようとしたタツキ先輩が振り返ったまま、口を開こうたしたとき、パクがタツキ先輩の腕を掴んだ


「先輩、行きますよ!じゃ、また週末来ますから!アキラ先輩」

「お、おぅ!またな」


結局話せずじまい
俺達はまだ付き合いはじめでぎこちないのかもしれない
でも、その分タツキ先輩と話したいし触れあいたい


週末・・・・・・
後2日もある

俺は小さくため息を吐いた






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