2015年<リクエスト作品>

□The future is a closed book
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うちの学園にはいつも明るく生徒に人気の先生がいる
彼はまるで自分までもが生徒の様にはしゃいでしまう

2A担任兼、ダンス部顧問
九瓏ケント

見た目もカッコよく、整った顔をしている
ただし、問題がある



それは・・・・・・

時に無防備で、時に素直じゃないって事







〜榊原タツキの場合〜


それは僕が体育館からの移動の帰り
黒塗りの車が目の前で止まる
僕はビックリしてその窓を覗いてみた


・・・・・・・・・
中は見えない
顔を近づけてみても、自分の顔が反射するばかり

その覗き込んでいた窓が急に下がった
僕はビックリして後ずさる
すると中から笑い声がした


「タツキ、そんなに俺の事を見つめるなよ」

「先生!!どうしたんですか?」

「神社まで行って来たんだよ。歩くと時間掛かっちゃうからね」

「そうなんですか?・・・ねぇ、先生。僕もこの車乗ってみたい!」

「ん?いいよ、おいで」

「わーい!」


僕は喜んでその車に乗りこんだ


「学園の車だから汚すなよ?」

「少ししか乗らないのに汚せないよ」

「それもそうか」


先生の横顔

先生を顔を正面から見つめると照れちゃうから、横からこっそり見る
その顔が好き

すると先生が目を伏せて笑い、車を止めた


「タツキ・・・見つめ過ぎ」

「・・・・・・え?」


ハンドルを握ったまま先生が僕を見る
見ていた事がばれ、都合が悪い僕は慌てて視線を外した
それなのに先生は更に顔を近づけて来る


「そ、そんなに近づかなくても・・・・・・」

「なぁ、タツキ。フルスモの後部座席って何しても分からないと思わない?」

「・・・フルスモ?」

「フルスモーク。車の窓に車内が見えないように貼ってある、この黒いシートの事だよ」

「へぇ、そうなんだ」

「だからさ、後ろの席でタツキと何してても見えないって事でしょ?」

「うんうん・・・・・・え!?」


僕は思わず先生の顔を見返した
だって・・・
そんな事言うなんて、まさか先生・・・・・・

僕の気持ちに気付いてるの?


「タツキは俺と何をしたい?・・・・・・なーんてな」


そう言いながら先生は再び車を走らせる
あっという間に玄関まで着くと、サイドブレーキを引きベルトを外した


「じゃあ、今度一緒にみんなでドライブでも行くか?」

「あ・・・・・・そうですね。じゃ・・・ありがとうございました」


僕はからかわれただけなんだろうか
いつもの事と言われれば、そこまでなんだけど・・・
思わせぶりな先生の言葉を真に受け、ドキドキが止まらない

先生にお礼を言い、車を降りる


「おいタツキ、大事なコンちゃん忘れてるぞ!」

「!・・・コンちゃん、ゴメン」


先生からコンちゃんを受け取ると、その手が僕の頭をポンポンと撫でた


「じゃ、後でな」

「・・・・・・はい」


先生の手の温かさが伝わる
それだけで十分だ

学校の中へと消えて行く先生の背中を見つめる


「・・・・・・コンちゃん、僕やっぱり先生の事が好きみたい」



どうにもならない気持ちをコンちゃんに打ち明けながら、ピンクの頭に顔を埋めた








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