2015年<リクエスト作品>

□乱反射
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人の記憶にいつまでも残るという事

それは誰にも分らない

それでも俺の事を忘れないで欲しい

一生記憶に留めて欲しい




それがたとえ傷になっても・・・

あなたの心に深く残ればいい・・・・・・
























「なぁ、泉・・・少しだけ見せてよ。お願い」

「・・・・・・・・・」


冷やかな視線
手に持ったプリントを音を立てて揃えると、席を立ち上がった


「今日俺当たるんだよ・・・だから、な?」

「何が『だから』なんですか?やって来ないアキラが悪いんですよ」

「・・・・・・分かってるよ・・・でもやって来なかったんだからしかたないだろ?」

「開き直らないで下さい」


泉の冷たい言葉に、俺は机に突っ伏した
そんな俺の後頭部に痛みが走る


「痛っ!・・・・・・何だよ・・・」


顔を上げると頭からずり落ちて来た物
英語のノート・・・
そこに立っていたはずの泉は、みんなにプリントを配り始めていた
何だかんだ言っても泉は俺を助けてくれる


「おぉ・・・サンキュー!」


俺は急いでノートを写しはじめる
綺麗な字で書かれたノートは、泉の几帳面さを表していた





俺は夕食後、自室で勉強していた
正確には勉強させられていた


「・・・・・・分かんねー・・・」

「何処がです?」

「最初から最後まで・・・・・・」


昨日の宿題を忘れた俺の監督を任されたのだ
英語以外の宿題もやらずに行った俺が悪いんだけど・・・


「具体的に何処が分からないんですか?」

「いや、だから全体的に・・・・・・」

「・・・公式が分からないんですか?」

「・・・なんでXとかYとか使うんだろーな?他のアルファベットじゃ駄目なの?」

「・・・・・・アキラの好きなもので代用したら良いんじゃないですか?」

「えぇ!?良いの?」

「・・・・・・・・・」


脚を組んだままの姿勢で、読んでいた雑誌を机に置いた
せっかく教えに来たのに、俺の態度に怒ったんだろうか
でも勉強が得意じゃないんだから仕方ない


「怒るなよ・・・だって俺の頭が拒否するんだよ。この問題だって・・・」


俺がそう話しているのに、泉は急に立ち上がって俺の部屋の扉に鍵を掛けた
その行動の意味が分からない


「泉何して・・・・・・」

「心配ですよ。そんなに物覚えが悪いんじゃ、俺の事も卒業したらすぐに忘れるんでしょうね」

「・・・・・・は?」


急に何の話をし始めたんだ?
でも・・・今、俺の事馬鹿にしてた?


「何だよ、物覚えが悪いって!ダンスの時は違うだろ!?」

「そうですね。頭より身体に憶えさせた方が良いんでしょうね、アキラの場合」

「イチイチ感に触る言い方だな」




いつもの泉のお小言

そう思っていたんだ

それなのに・・・・・・









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