愛しい人【完】<リク>

□愛しい人
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俺には恋人がいる


同じクラスで寮の部屋も隣だ
同じ部に所属し、いつも一緒に居られる


端整な顔立ちに眼鏡をかけて、いつも冷静沈着な人
人一倍努力家で妥協を許さない人

俺が大好きな人

俺がすっと見守っていたい人




「・・・何ですか?」

「え?いや、見てるだけだけど」


俺の回答に呆れ顔で視線を向ける
でも、その中に照れが隠れてるように感じるのは・・・俺の気持ちの問題だろう


「起きたんなら自分の部屋に戻ってください」

「え〜、めんどくさいじゃん」

「もう1時になりますよ」

「・・・じゃあ、ここでシャワー浴びてこーっと」

「自分の部屋で入って下さい」


容赦のない受け答えだ
俺は拗ねた顔で顔を覗き込んだ
ベッドの中の泉の目は眠たいと言っていた


「分かったよ。じゃあ帰っかな」

「早く寝てくださいね」


そう言いながら泉が怠そうに体を起こす
俺は適当に服を着ながら、泉の肩からずり落ちたシーツをかけ直した


「寝てろよ」

「カギはかけないといけないでしょ?」


あぁ、確かに・・・
俺は納得して廊下に出る
そして振り返り、顔だけを部屋に戻し、泉にキスをする

決まって泉は何も言わず視線をずらす
この雰囲気に慣れていないからだろうか?
でもその仕草すら可愛く見える

そう思っていると、泉の部屋の扉が静かに閉められた
カギをしめる音がする

俺は微苦笑しながらその扉におでこを付ける


「・・・なんか言ってから閉めてよ」


小さな声で独り言のように囁いた


「・・・おやすみなさい」

「!!」


扉のすぐ向こうから小さな声が返ってきた
もうそれだけで俺は幸せな気持ちになる
今すぐこの扉を開けて、もう一度抱きしめたい
その衝動を抑えて、自分の部屋に戻ろうとした


「・・・・・・?」


薄暗い廊下
非常灯のその先・・・

今、誰かいたような・・・

気のせいか?

目を凝らしてもそこには何も見えない


「見間違いか・・・」


もう一度泉の部屋を見て、俺は自分の部屋へと帰った






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