愛しい人【完】<リク>

□愛しい人
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翌日
俺が部屋を出る時には、既に泉は部屋を出た後だった

校門まで来ると、風紀員として仕事をこなしている泉の姿が目に入った



「泉先輩おはようございます」

「おはようございます」


すれ違う生徒が泉に挨拶をしている

一歩一歩近づきながら俺は確信した
いつもの隙の無い風紀員とは違う・・・


「オハヨ―泉」

「アキラ、おはようございます」

「教室でな」

「はい」


それだけ言葉をかけて、教室に向かった
人前で何かにとされることを、あまり好きがらないし、俺もいつもの泉の表情以外をみんなに見せたくはない

自分の席に着くと窓から校庭を眺めた
1限目から体育なのか、1年の朴が元気いっぱいに走り回っている
朴が誰かを見つけて、猛ダッシュしていく
その先に泉がいた
泉と話しながら、誰かを手招いている
泉と朴は下駄箱の方に歩き出し、見えなくなる

予鈴が鳴った
HRがもう少しで始まるってのに、泉はまだ戻らない
廊下に目をやると、漸く戻ってきた

俺の脇を通り、前の席に座る
小さく肩が揺れた
珍しい・・・溜息を吐いていたみたい


「・・・泉」


俺の声に反応した泉は、少しだけ頭を動かした
話だけを聞ける体勢をとって、こちらを向こうとしない


「・・・泉、ほら」


その言葉に俺の顔を振り向いて見た
いつもよりも青白く見える
俺はさっき買ったミネラルウォーターを差し出す

泉は数秒それを見て、受け取った



「ありがとうございます」

「・・・大丈夫か?」

「・・・大丈夫ですよ」



前に向き直り、水を飲んでいる

俺・・・昨日無理させたっけ?
いや、そんな事はないと思うんだけど
風邪でも引かせたかなぁ・・・


そんな事をずっと一人で考えていた





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