コンユss

□おとうさんのほしいもの。
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父の日が近いので、勝利と二人で少し高級なネクタイを買った。
店のお姉さんが綺麗にラッピングしてくれて、仕上げに「お父さんへ」というシールを貼ってくれたところで気づいた。
おれにはもう一人、親がいるじゃないか。



「コンラートが欲しがっているもの?知るかそんなもの」

日本の父の日はもうすぐそこまで迫ってきているけれど、グレタが作ってくれた眞魔国式父の日まではもう少し余裕がある。

どうせあげるなら、コンラッドが欲しがっているものをあげたいもんな。

そんな訳で、コンラッドの欲しそうなものを考えてみたんだけど、イマイチ思いつかない。

やっぱり趣味に使うものとかがいいのかな。でも、コンラッドの趣味って何だ?

そう言えばおれは、コンラッドが休日何をしているかなんてまったく知らない。

考えてみればそれはもっともで、おれの護衛をしている彼にとって、おれが地球に帰っている時が休日なのだ。

それならばと、休日のコンラッドを知っている人にリサーチをかけてみたのだが……。

「コンラートの欲しいものが知りたいのなら、自分で聞けばいいだろう」

彼の実の弟はまったく心当たりが無いらしい。

「それじゃ意味ないんだよ。どうせならサプライズしたいじゃん?サプライズ!」

「ふん、勝手にしろ。ぼくは手伝わないからな?……そういえば、ギュンターはコンラートと古くからの知り合いだから、何か知っているかもしれないぞ」

ヴォルフはそう言って自室に帰ってしまった。

それにしてもヴォルフっていいやつだよな……わがままプーで寝相悪いけど、そこを除けばほぼ完璧だし。あ、でも、すぐに決闘って言い出すところは直したほうがいいな。

そんな他愛無いことを考えながら執務室に向かう。

ギュンターなら色んなこと知ってそう。おじいちゃんだし。ていうか、ギュンターとコンラッドってだいぶ年が離れてるよな……小さい頃のコンラッドは「ギュンターお兄ちゃーん」って慕ってたりするのかな。いや、お父さんか?



「父の日に名付け親にまで贈り物を贈ろうとは……なんと美しい心意気でしょう!ギュンターは、ギュンターは感動しております……!」

「わわ、ギュンター、カーペットに汁が!」

「これは失礼……しかしコンラートの欲しがっている物の話など、私聞いたこともありません」

グウェンが見たら頭を抱えそうなシミを作ったカーペットを丸めながら、ギュンターは昔を思い出すように語る。

「しかし、私と出会った頃にはもうグリエと付き合いがあったようですし、グリエに聞いてみては?ちょうど眞王廟に帰ってきている頃だと思いますよ」

確かにヨザックはコンラッドの親友だし、頼りになりそうだ。



「隊長の欲しがってるものですか?そんなもの知ってどうするんですかー?」

「父の日にプレゼントするんだよ!あ、サプライズしたいから、おれがここに来たってコンラッドには秘密な」

「だからお一人でこんな所にいらしたんですね。多分隊長、今ごろ必死で坊っちゃんのこと探してますよ?」

うっ……。トイレに行くって言ってコンラッドのところから逃げてきた訳だけど、確かにコンラッドがおれのことを探してくれていると思うと申し訳ない。 もう随分と時間もたつし。

「それに、隊長は坊っちゃんから貰えるものなら何でも喜ぶと思いますよー」

何たって隊長は、坊っちゃんのこと大好きですからね。

ヨザックがその言葉を言い終わらないうちに、部屋の扉が開いた。

「陛下、こんなところにいらしたんですね」

「陛下って言うなよ、名付け親」



「俺のほしいもの、ですか?」

優しい名付け親から優しい注意を受けたあと、どうして眞王廟を訪れたのか聞かれた。

ここで正直に答えたらサプライズが台なしだ!……待てよ、サプライズってそこまでする必要あるのか?ヴォルフもギュンターもヨザックも知らないことを、他の人が知ってるとも思えないし……いっそ本人に聞くのが早いんじゃないか?

だからおれは、正直に答えた。

あんたの欲しいものが知りたいんだ。

「そうですね……急に言われても思いつかないな。けど、そんなもの聞いてどうするんです?」

「もうすぐグレタが作ってくれた、眞魔国父の日だろ?だから、こっちの世界のお父さんでもあるコンラッドに何か贈ろうと思って」

「俺はお父さんですか……」

「ん?なにか言った?」

「いえ、何でもありません。それでしたら、俺は欲しいものなんてありませんよ。もう全てあなたに貰っている」

「大袈裟だなぁ……だいたい、城だって部屋だって、元からこの国にあるものだろ?俺があげてる訳じゃないよ」

ただ純粋に、おれはコンラッドに日頃の感謝をこめて贈り物をしたいんだ。だけど、城下に出るときも俺ばかりで、コンラッドは自分の買い物なんかしないし……趣味がわからないんだ。趣味が。
服は制服姿しか見たことないし、ご飯だってメイドさんが作ってくれた物なら好き嫌いなく食べる。部屋だってシンプルで……って、あるじゃないか、ひとつだけ!

「アヒル隊長だ!」

「え?ユーリ?」

「コンラッド、部屋の一番いい位置にアヒル隊長置いてるだろ!そうか、そんなにアヒルが好きだったのか……うんうん。それじゃあおれがお風呂で遊べるアヒルちゃんセットをプレゼントしよう!」

「いえ、そこまで特別にアヒルが好きというわけでは……」

「そうと決まればコンラッド、今から城下まで買い物に行くぞ!」



後日、コンラッドの部屋のアヒル隊長に、お嫁さんと子供ができた。
来年からはちゃーんと父の日に労ってやらないとな、アヒルお父さん。

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