コンユss
□間違えたのは、
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おれたちは健全なお付き合いをしてきた。
お互い支えあって、助けあって。
告白したのはおれから。キスをしたのは彼から。
おれたちは健全なお付き合いをしてきた。
「やっぱり胸の大きい女の子がいいよな!なんつーか、抱きしめたら柔らかそうで」
もう顔も思い出せない中学の頃のクラスメイトの言葉を思い出した。そりゃ、あるに越したことはないよ?でも、別に無きゃダメって訳でもない。おれはお互い高め合えるような健全で素敵なお付き合いがしたいの。胸よりその方が大事。
コンラッドと付き合い始めたのは、もう三ヶ月も前のことだ。
告白したのはおれから。キスをしたのは彼から。俺たちはどこまでも平等で対等だ。
コンラッドに不満はない。むしろ完璧ってくらいいい男だ。俺は毎日が幸せだった。楽しい仲間、優しい恋人、やりがいのある仕事。そりゃ嫌なこともあるけれど、充実した毎日。
「今晩、俺の部屋に来て頂けませんか?」
彼がそう言ったのは、今日の昼のこと。
正直驚いた。
コンラッドは、その、慣れてそうだし、こんな直接的なの物言いをしなくても、もっとスマートにできるやつだった。
だから、その不器用さがおれへの誠意なのだとすぐにわかった。
「うん、いいよ」
嫌だと言ったらやめてくれる。その信用があるからおれも行くんだ。
「陛下、来てくださったんですね」
「陛下って言うなよ」
いいと返事をしたのに、扉を叩いた俺の姿を見て、コンラッドは心底驚いたような顔をした。
「正直驚きました。その、あなたは本当に意味がわかってここに来たんですか?」
「当たり前だろ」
あんな直接的に誘われたら、おれだって意味はわかる。
優しくキスをされた。コンラッドのキスは好き。俺が押しのければ絶対に押し返せるような、そんな弱い力で優しく触れてくる。
「あなた相手だと頭が真っ白になって上手く行かない」
「それでいいよ。おれだって今何も考えてない」
コンラッドが好き。一番におれを理解してくれて、優しくて、俺を助けてくれる。
その好きってきっと、そういう意味の好き。
頭が真っ白だと言ったのに、いたって自然な流れでベッドに連れて行かれた。
真剣な顔で見下ろされて、ああ、これが女の子の気持ちなのかなーなんて呑気なことを考えた。
遊ぶようにキスをして、だけど不器用にボタンを外される。
これからどうなるのかなって考えて
考えて、考えて
考えて
精一杯の力でコンラッドを突き飛ばした。
呆然とする彼の目の前で、ゴミ箱に食べたものを全て吐き出した。
想像してしまった。想像できなかったことを。
男同士。男同士なのに、セックスするってどういうこと?
優しく触れる?愛しあう?
男同士なのに?
今まで蓋をしてきた感情が、いっせいに溢れて肌を濡らした。
男同士なのに。
コンラッドはいつもより下手くそに笑うだけだった。
そんなに優しいから、間違いが起こるんだ。
だけどコンラッドの中で、これは間違いじゃない。
男同士なのに。
間違いだと思っているのはおれだけ。
間違えたのは、おれ。