まるマcpごちゃまぜ
□いつの間にやら気づかぬうちに
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魔王陛下ご寵愛トトは、今のところ隊長とヴォルフラム閣下の首位争い。三位には猊下と続く。
坊っちゃんの気持ちはどうあれ、眞魔国で扱いの難しさはトップ3にも入るであろう三人がランクインするとは。
今日もいつの間にやら気づかぬうちに、彼らの隣には坊っちゃんがいる。
たまたま遠くの仕事がなくて、しばらくは血盟城にいることになった。
てっきり猊下の護衛を仰せつかると思っていたのだが、上司の口から出た一言は「暇をやるから休養を取れ」というもの。
仕事に取り憑かれていると思いきや、けっこう部下思いの良い上司なのだ。
しかし、いざ暇をやると言われるとすることがない。昔は士官学校を抜けだして悪友と町にくり出したりしたが、今はその悪友も愛しの陛下にべったりだ。
だから、その頼み事を聞いたのはほんの気まぐれだった。
「魔王陛下ご寵愛トトの経過を調べてきてほしいの!」
まぁ、たまにはメイドちゃんたちにいいとこ見せるのもいいかもねー。
「どうなんですかー?坊っちゃんとは」
まずは現在ご寵愛トトの首位に君臨する婚約者サマ。
「どうもこうも、ぼくとユーリは婚約者なんだぞ!?それ以上の事実があるか!」
ほうほう、進展は無しと。
「し、進展!?ぼくはユーリの気持ちを尊重してだな……」
これじゃあしばらく坊っちゃんの心が傾くことは無さそうだな……。
葉っぱかけてみようかとも思ったけど、首位が独走じゃおもしろくない。今回は温かく見守ることにしますかね。
「やあグリエ。こんな所で何してるの?」
次は血盟城でたまたま出会った猊下。
まず、猊下に隠し事は通らない。変に疑われる前に洗いざらい話してしまうのが吉だ。
「ご寵愛トトの経過観察ね……眞魔国の人たちは面白いこと考えるね。ざっと一位はフォンビーレフェルト卿、二位はウェラー卿ってとこだろ?」
おっしゃるとおりです。
「三位は誰かなー……あ、まさかの大穴でフォンクライスト卿とか?」
三位はあなたですよ、なんて言えるはずもない。バレバレの誤魔化しを使うと、猊下はそれ以上聞く気が無いのか適当に相槌を打った。
それにしても、誰でも自分に向けられる好意には疎いものだが、あの猊下が予想もできないとは……。予想もできないほど坊っちゃんに骨抜きにされているのか。
頭に浮かんだ想像は、言葉にせずに隅に置いておくことにした。
「それにしても、そのご寵愛トトって僕は参加できないのかなぁ」
いやいや、猊下はトトされる側ですから。
「やっぱりダメだよねー。あーあ、ドンピシャで当てる自信あるんだけどな」
てことは、猊下は陛下のご寵愛の相手を知ってるんですか?
「さあ、それはどうだろう」
猊下はいつも通り、意味深なことを言った。
「何の用だ」
やだ〜、隊長ったら冷たい〜。
「気色悪い声を出すな。で、何の用なんだ」
怒らないで聞いてくださいよ?坊っちゃんとはどうなんです?
「陛下と?俺がか?」
もちろん。他に誰がいるんですか?
「俺が陛下と何かあるわけが無いだろう」
うわぁ、人を殺しそうな勢いの冷たい目!
それにしても、最近の隊長は本当に俺に冷たい。隊長が誰かにやつ当りするなんて珍しい。よほどイライラしているのか、それとも、オレが知らないうちに何かしたか……まぁ、オレは今まで遠くに仕事に出ていたわけだからそれはないか。
「それより、帰ったんだったら陛下にご挨拶に行ってこい。あんまり顔を見せないから心配なさっていたぞ」
へーい。で、隊長、あんたは一緒に行かないんですか?
「ヨザック、おかえり!今回は長いこと帰ってこなかったから心配しちゃったよ」
それはお優しいことで。ありがとうございますね、坊っちゃん。
「あ、今回はどのくらいこっちに居られるの?」
グウェンダル閣下にお暇を頂いたので、しばらくはこっちにいますよ。
「えっ、てことは、ヨザック今休暇中?」
そーですよ。
「わざわざ挨拶に来なくても良かったのに……そうだ!この後町に買い物に行こうよ!」
いやいや、お勉強休憩中の陛下を連れだしたとなれば、オレが隊長に殺されますよ……それより、聞きたいことがあるんですが。
「なになに?おれにわかることなら何でも聞いて!」
坊っちゃんの好きな人、教えてくれませんか?
可愛いお顔が真っ赤に染まった。
一体坊っちゃんは誰を思ってそんな顔をするのか。何にせよ、隊長とヴォルフラム閣下に見せたら喜びすぎて襲いかかりそうだ。
「ど、どうしてそんなこと聞くんだよ」
ちょーっと気になって。別に答えたくなかったら答えなくていいんですよ?
「いや、答える……けど、驚くなよ?あ、いや、驚くなってのは無理があるか……」
ほう、そんなに大穴なのか……と、下世話なことを考える。
ギュンター閣下かツェリ様か……それとも大穴の中の大穴でアニシナちゃんとか?
「おれが好きなのは……ヨザックなんだ」
……………………え?
坊っちゃん今、何ておっしゃいました?
「だから、おれ、ヨザックのことが好きなんだ!」
いつの間にやら気づかぬうちに、坊っちゃんの隣にいたのはオレ?