ゴーストフェイス

□もしも、世界が
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目を覚ましたらみんなが消えていた
比喩でも空想でもなく、本当に。

寝癖をつけたまま、目を擦りながら階段を下りいつものように「おはよう」と呼び掛けても返事は返ってこず、代わりに香ばしい匂いが鼻孔をくすぐったのだ。

最初はいたずらだと思った。
テーブルの上のパンもコーヒーも焼きたての入れたてで湯気が立っていたから
私を驚かそうとしてどこかに隠れているのだと信じて疑わなかった

確信が揺らぎ始めたのは、そう…朝御飯を食べ終えて支度を整え学校へと歩いていた時。
いつもはすれ違う顔馴染みの人たちはおろか、他の人もいない静かな通学路に不安が募り歩を進めた私は学校にたどり着いて、呆然とした。

誰一人として、いないのだ
いつもなら賑やかな空気に包まれているはずの廊下も教室もすべてが空っぽで不気味な静寂が辺りを支配していた

思わずその場に荷物を取り落とした
ドサリと音を立ててテキストやらが散らばるが構っていられない
気持ちを急かす焦燥感に叫びだしそうになりながらケータイを取りだし、コールする
「お願い、出てください…」
彼さえいなかったら私はどうすればいいのだろう
泣きそうな私の心情をあざわらうようにコール音は延々と響き、出る気配はおろか留守番に繋がれる様子もない
「師範…っ!!」
悲鳴のように彼を呼ぶ声は電話口に吸い込まれ、コール音だけ不気味に続く やはり彼は出ない

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