ゴーストフェイス

□裏
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*グロ注意、長いです

何処が悪かったのかを何点か上げるとすると真っ先に来るのは
`獲物相手に油断したせい´だろうなあ…



その日も狩りに連れて行って貰った。
いつものように獲物を切り倒しながら人数を減らしていき残り数人になった時、わずかに気を緩めてしまったのだ。
建物の二階をひと部屋ずつ見回っていたとき、探索しようとしていた部屋の扉が急に開き引っ張り込まれた。
ご丁寧に鍵まで閉められナイフを構えると相手は両手を上げて降伏のポーズを取った。

「おいおい、待てよ!俺はお前らの仲間だぜ?」

相手の言葉に服装をよく見ると、確かにマスクはしていないものの黒衣の上に黒いローブを羽織っている。
困惑が頭の中を駆け回り、ナイフを振り上げる腕が無意識に下がった。

「?」

私以外の助っ人が来るなんて聞いていないけど、臨時の人なのかな…
思わず首をかしげる私に相手は苦笑した。

「なんだよ聞いてないのか」

困ったように頭を掻く姿を見て、余計に混乱する。
信じて、いいのだろうか?

「それより、いいナイフだな」

話を変えられ肩を跳ね上げた。
しまった。考え込んでしまっていた。
相手は構わずに言葉を続ける

「ちょっと貸してくれないか?あまりにも急に呼び出されたもんで武器持ってなくてよ」

渡すわけにもいかずどうしようか悩んでいると、急に男が襲い掛かってきた。
ナイフを取られて放り投げられる。
さらに手をつかまれて組み敷かれた。

隠されていた凶暴な笑みを浮かべて、相手は舌なめずりをする。

「捕まえた」

獣のように荒い息を吐きながらこぼす唾液がマスクに落ちて不快感が膨張した。

「…」

逃げようにもあまりの力に身動くことすらできない。

「安心しろよ。殺しはしない。いや、死ぬことなんか許さない」

ガチッ!と鋭い音が鳴り、目の前で歯が噛みあわされた。
再度開いた口で私のマスクを噛み、犬のように大きく一度首を振って手を使わずにマスクをはぎ取られる。

視界が一気に広がり凶暴な目と視線がかち合った。
今まで隠していた素顔も首元も晒されている。
自分の無防備さを考え、背筋が寒くなった。

何を…されるのだろう

「なんだよ。女だったのか」

愉快気に喉を鳴らし、男は懐から注射器を取り出した。
透明な液体が中を満たしているのを見てさらに悪寒が強くなる。

「なに、それ」

無意識に出た言葉に男は答えた。

「使ってみればわかるさ」

反射的に男を蹴り上げる。
手首を掴んでいる手の力が弱まり絶好のチャンスだと腕を強く振って無理やり引きはがした。

素早く男の下から逃げだした…のだが
今度は足を掴まれて派手に転ぶ。
打ち付けた額が地味に痛いがそんなことは構っていられない。
慌てて振り向いた私の視界いっぱいに男のこぶしが叩き込まれる。ガッと鈍い音が響き鼻に激痛が走った。

ドロリとしたものが顎を伝い鉄さび臭くなる。
「っ!!」
思わず鼻を押さえて呻く私の髪を容赦なくつかんで引き寄せ凶暴的な笑みを浮かべて男は笑う。

「逃げようとするんじゃねえよ。」

その時、投げ出された指先に固いものが当たった。
視線を外してそれに目を向けたらバレてしまうのでどうか当たっているように願いながらそれを握りしめ相手の首元に突き立てる。

はずれでは、なかった。
驚きの表情で固まった彼は目を見開いたまま静かに口から血を一筋こぼす。

次の瞬間その目に様々な感情が沸き上がった。
憤怒、混乱、屈辱、恐怖
彼の注射器を持った手が動くが、なぜかナイフを引き抜くどころか動かすことすらできない。

私は、彼の感情に慄いていたのだ。

その隙に相手は注射器の先端を私の腕に突き刺し、懐から取り出したもう一本の液体も注入する。
液体が血管から体内に入ってくる感覚がひどく不快で、感情にまかせてナイフを引き抜く。

血が、詮でも抜かれたように一気に噴き出した。
暖かな液体が、顔に髪に体に降り注ぐ。
命の奔流のようにとめどなく体を循環していた酸素が体外に排出されていくため少しずつ力が抜けていき、やがて私の髪を掴んでいた手も離れ床に仰向けに倒れた。

派手な音を立て、容赦なく重力に引かれる様は
まるで糸の切れたマリオネットのようだ。


薄闇の中にぎらぎらと光っていた目の輝きは、死してなお失われることはない。
私はそれがひどく気持ち悪かった。
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