トップ小話3

□トップ小話3
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「明けましておめでとうございまーす!」
「ええっ?」
「おや、何を驚いているんだい渋谷?」
「そりゃお前、驚くに決まってるだろっ」
「どうしてだい?」
「今は二月だろ! それも半ばも過ぎてんだろ! バレンタインもとっくに終わった時期に正月とか言われたら普通驚くだろ!」
「やだな〜旧正月って物を知らないのかいきみは」
「いや日本の正月は一月一日だから」
「僕、香港の生まれだもん」
「でもお前は日本人だろうが。おれだってアメリカ生まれだけど、新年の時報の瞬間に周りの奴にキスとかしねえし」
「キスしてもいいって言われても出来ないだけのくせにー」
「うっ、うるさいな! そんな事は今はどうでもいいだろうが! それよりも何で正月だって話だろっ」
「年始の挨拶をしないと一年が始まらないだろう?」
「ま、まあそれはそうだけど……って、いやお前、うちで紅白と行く年来る年観て年越しそばと雑煮食ってたじゃん。箱根駅伝も観たじゃん。お袋にお年玉も貰ってコタツにミカンで正月満喫してたじゃん」
「あーさすがに遠慮したんだけど、美子さんが強引にくれたんだよねえお年玉。結構いっぱい入ってたからお手伝い多目にしといたよ」
「おかげでおれや兄貴が嫌味言われたけどな、健ちゃんに比べてうちの子達はーって。つーか人んちの母親を名前で呼ぶなよ」
「じゃあきみもフォンシュピッツヴェーグ卿と呼べよ。あの人、三兄弟の母親なんだし」
「うっ、それを言われると……てかヨザック、あんた何でずっと黙ってんの? 前から思ってたけど村田に無理して付き合う必要もないんだぞ? 嫌なことは嫌って言っていいんだぞ?」
「いえ、別に嫌というわけでは」
「でもなんか引きつってるじゃん」
「それは、その……色が」
「色?」
「もーヨザックってばまだ言ってんの? しつこいなあ」
「え……あっ、黒! ヨザックのマフラー黒じゃん!」
「はあ……オレはやめませんかって言ったんですけどねえ……」
「村田お前、魔族に黒着せるとかないだろ!」
「いいじゃん別に、マフラーくらい」
「いやダメだろ。ヴォルフですら黒は着ないんだぞ? あのわがままプーすら着たがらないもんを、庶民のヨザックに無理強いすんな!」




 二月になってからでも年賀状を描けるじゃん! 旧正月っていなあキャッホー!
と、心から思いました、はい。
 2015.2.19
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