ああ、天女様!
□1.天女が舞い降りたらしい
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放課後、図書室で本を借りようとまたもや忍たまの敷地に来たのだが…うん、こうもあっさり入れるなんて、機能していないにも程がある。
前は煩くて、明るかった放課後の敷地も…今では静かで物悲しい。
見慣れてはいけない光景。
下級生の忍たまの子達は、遊びたいだろうに…委員会でそれどころじゃない。
でも…“何故先輩達は、あの子に付きっきりなんだろう。”
図書室の前まで来て、障子に手を掛けようとしたが踏みとどまった。
“何故?”
久々の疑問に好奇心を隠しきれない私。
恐らく、今は心拍数が上がってるし、浮き足立ってる。
元気のない時の好奇心ほど、いい薬はない。
こっちに来て、一番最初に覚えた事じゃないか。
思い立ったらすぐ行動。それが私のモットー。
早速、天女様を探そうと忍たまに見つからないよう学園中を歩き回ったが、天女様の姿は無かった。
うーん、お出掛けかな?
でも、忍たまと出掛けたわけではないらしい。
その証拠に…上級生…四年生はソワソワしていたし、五年生は天女様を探してて、六年生は天女様が誰と出掛けたのかを考えてイライラした様子だった。
あの子、肝が据わっているのか、それとも何も考えていないのか、興味が湧く。
学園の門まで行くと、小松田さんが「おかえり〜」って、誰かに話しかけていた。
茂みに隠れてよくみると、両手に一杯の食料を持った天女様。
なるほど、食堂のお使いだったんだ!
すると、どこから聞き付けてきたのか六年生の人達がやってきて…あれよあれよと、天女様の荷物を奪い合って持ち始める。
当の天女様は若干、困ってるようだ。
昼間も思ったけど…天女様は、演技をしているわけではないらしい。
この事で、なんとなく分かってきた。
天女様は仕事をしていない訳ではなくて、仕事を奪われている。
忍たまの行為は、彼女にとって迷惑な行為になっている。
なんともまぁ、ややこしい。
恐らく、上級生達は天女様に好かれる、あるいは天女様の側に居たい、良いとこを見せたいって思ってるんだろう。
それが天女様にとって迷惑な行為とは思わずに。
ここまで盲目的に見えるのは、ある意味凄い。
貴方達は本当に忍者か。
天女様を尾行しようとしたら、誰かから腕を掴まれた。
「お前、こんなところで何をしている」
首筋がゾクゾクする感じがする。
嫌な感じだ。
相手の方を見ると、深緑色の忍び服を来た人が立っていた。
誰だっけ?えっと、髪がサラサラで、色白な…うーん、作法の人だったと思うけど。
忍たまの上級生で…誰だっけ?
名前が思い出せずにうーんと、唸っているが…どうやら相手は待ってくれる気は無いみたいだ。
「天女様に何の用だ。事の次第によっては…」
『天女様に興味があります』
先輩の危なそうなセリフよりも正直に早く答えた。
興味があるのは本当だし、忍たまと言えど先輩の口から危険な言葉を聞きたくなかった。
先輩は綺麗な顔に眉を寄せて、険悪な雰囲気を漂わせた。
『天女様って、可愛らしくて奥ゆかそうで…興味があるんです!!』
えへんっ!と、自分でもゾッとする行動に鳥肌が立ったけど、ここで引いたら殺される。
先輩の目を見たら一目瞭然だ。
“下手なことをしたら殺してやる。”
目が恐ろしい。
『忍たまの皆様だけが天女様とお話しするなんて…不公平ではありませんか?』
ニコリと笑うと先輩は私の事を鼻で笑った。
ですよねー。
「お前、そんなことを言って天女様を傷付けるつもりだろ」
『そんな!ほら見てくださいよ。武器は持ってませんし、勿論毒薬も持っていませんよ?持っているのは学園の本だけですし』
くのたまとしてどうかと思うけど、元々本を返しに来ただけだ。
武器なんて邪魔なものは置いてきた。
本を取って、中身を確認する先輩。
「………危険物ではなさそうだな」
『ね?ただの好奇心ですよ!』
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