ああ、天女様!
□15.嘘と殺意
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「待ちやがれ!!」
「さっきからそそくさと逃げやがって!」
「っ…追い付かない…!」
「あの身のこなし、どっかで…?」
「……」
黒服に身を包んだ綾部を、潮江、食満、田村、浜の四人が追う。
先程からイラついて追い掛けている六年の二人は、久々に武器を持つも相手が逃げていて勝負すらできない。
田村も久々に体を動かしているせいか、前のように足が追い付かない。
浜は何かを気に掛けているようだが、綾部は黙ったまま自作の罠だらけの場所に導いていた。
(たった四人か…チッ…せめて、滝夜叉丸や五年生の人達が付いてくれば、確実に戦力を減らせて体力も削らずに済んだのに)
綾部はヒノエの様に擬声の術が得意なわけじゃない。
声を出すと直ぐにバレてしまうため、心の底から舌打ちをした。
そして、茂みに仕掛けていた縄を切った。
「今の…はぁあ!!?」
すると、プツンと言う音と共に浜と田村が落とし穴に落ちた。
「田村!浜!」
「なんだこれは…とり餅!?」
「う、動けない…」
(そりゃそうだ。何てったって、七日の間に暇なヒノエさんが作った特製のとり餅なんだから…簡単には剥がれない)
クスッと笑ったあとに、仕込み板を踏んで次の罠を発動させた。
(さてさて、いつになったら勘が戻るんだろ)
この時、綾部は…いや、皆が気付いていなかった。
"二人の姿"を。
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