全力で遊べ!!

□16.プチ不運発動
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「久住ってさ、笑わないの?」
『はい?』

教室で自主勉強をしていると、虎若くんが話しかけてきた。

『いきなりどうしたのですか?』
「あ、いや…」

虎若くんはそう言って、教室の隅に居る皆の方を見る。

あー…虎若くんは当て馬か。

『笑いますよ。…人並みには』

そう言って、計算問題を解いていく。
数学は最初に教科書を読むと、授業で分かりやすいんですよね。
あ、この公式はこっちか。

「ならさ、ちょっとは笑ってみて欲しいなぁ…なんて」
『何故ですか?』
「えーっと…」

チラチラと虎若くんが皆を見る。
虎若くん…皆に何されたの!?

仕方がないから、皆の方を向いて笑顔を向ける。

これで満足ですかって言う思いで。

「り、利吉さん並の営業スマイル…」

誰ですか。

意味のわからないまま、もう一度勉強し直す。

…と言うよりも、営業スマイルとか言わないで下さいよ。
接客業は笑顔が基本なんですから。

「うーん…どうしたら久住ちゃんが笑うと思う?」
「いっつもしかめっ面とかだからな…」
「照れた表情もあるよ。…キレたときは無表情に近いけど」
「うー!せっかく友達になったのに、楽しまないなんてもったいない!」


…ごちゃごちゃ何を言い出すんやら。

…………これでも、この生活を楽しんでるつもりなのに…伝わってない?

いやいや、表情か、表情なのか!
実家の接客業のし過ぎで表情が固くなったのか!?
そう言えば、お母さんが言ってた…「もっと表情崩して笑いなよー」って…こ、この事だったの?

皆がヒソヒソとしている間、私も私で悩んでた。




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