全力で遊べ!!

□8.無理と無情
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遠くから鼻歌を歌う声が聞こえてきた。
特徴のある高い声、あれは…

「いっちば〜ん!!ってはにゃ?久住さん、もう来てたの?」
『喜三多くん、おはようございます』

喜三多くんだった。
はやいね〜なんて、にっこり笑う喜三多くんにそうですね、と当たり障りのない返事をする。

だって、喜三多くんも私を部活に誘っている一人だ。

今だに、部活に悩んでいる私にどどうしろと。

「わぁ〜久住さん、今日の教室は一段と綺麗だね〜」

…思わず、私の警戒心が一気に揺らいでいくのを感じる。
教室をキョロキョロ見渡す彼に私の思ったことは「この人はマイペースっぽい」だった。

『…そうですね』
「うん!ボク、今日が日直なんだけどこれなら心配要らないね〜」

ああ、なるほど。
だから何時もは時間ギリギリの喜三多くんが早かったわけだ。

一人で自己完結をしていると、喜三多くんがニコニコと何かの壺を出してきた。
…いや、完全に見覚えがある。
自己紹介の時に、インパクトを受けたあれが入っている壺だ!!

『喜三多くん、その壺…どうする気ですか』
「はにゃ?することがないからナメクジさんたちと遊ぼうかと思って〜」

アウト!!
それアウト!!
折角、教室を綺麗にしたのにナメクジが這いずり回ったら元もこもない!!


『それはやめましょう。もしも誰かが来て、ナメクジさんが踏まれるかも知れませんよ』
「あっそれはやだよ〜」

喜三多くんが顔をブンブンと横に振っていやがる。
言い過ぎたと思ったけど、仕方ない。
もしナメクジが這いずり回っていたら、金吾くんや伊助くんが悲鳴を上げそうだ。

「うーん、皆が来るまで時間があるし何をしようかなぁ…」
『…あれ?日直って、喜三多くん一人なんですか?』
「うん!庄左ヱ門は学級委員長だし、久住さんが副学級委員長になったから日直は一人ずつになったんだよ〜!庄ちゃんから聞いてない?」

…知らなかった。
てか、庄左ヱ門くん…私、聞いていませんよ。
日直や日誌が回ってこなかったわけか…。

「聞いてないの?庄ちゃんが言い忘れるなんて初めて見た〜」

…まぁ、色々ありましたし。

マイペースな喜三多くんとの会話は、途切れることなく弾んだ。
…ほとんど、質問攻めだったけど。




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