ああ、天女様!
□1.天女が舞い降りたらしい
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学園は変わった。
あの元気溌剌で活気に溢れていた日々が嘘のように、今は学園全体がどんよりとしている。
正直、これほど暗い学園なんて無かった。
原因は分かってる。
「見てよ…また忍たまの先輩達、あの女…“天女様”に付きっきり」
「うわ…また掃除変わってもらってるし」
あの女…天女様とは、空から降ってきた女の子のこと。
へいせいって所から、こっちのところに来てしまったらしい。
うーん…「へいせい」って言葉が、なんだか頭に引っ掛かる。
…でも今はそんな場合じゃない。
あの日から忍たまの上級生達が、目の色を変えてあの人に付きっきりらしい。
ちょっと見ただけだけど、天女様はかなり可愛かった。
でも、それは可愛いわけであって、この時代にあった美女ってわけではない。
でも、問題はそこではなく仕事のこと。
先程、同僚のくのたまが言っていたように忍たまの上級生が天女様の代わりに、仕事を変わっているんだ。
何故、天女様が学園に居るのかと言うと、
一つ目は、行くところがなくて可哀想な天女様に見かねた学園長が、仕事を与えて学園に居ること。
二つ目は、学園を一般人の天女様に見られたこと。
三つ目は…アホな話、忍たまの上級生たちが天女様が残るように先生方や学園長に頼んだこと。
そんな上級生達は、口を開けば「天女様」ってメロメロの状態。
まぁこれが一番、くのたま達からすれば実に気に入らない訳で…。
くのたまの敷地は殺気が漏れ出ている先輩や、つまらなそうな後輩が常にムスッとした空気が張り詰めていて、これはこの場にいる同じ女の私としても怖い。
でも可哀想なのは、忍たま達の委員会の方。
今じゃ、下級生の忍たま達が上級生の分まで仕事している。
下級生にいっちゃ悪いけど…これじゃ、機能していないのとほぼ同じ。
先生や学園長が冷静で居るのは唯一の救いだと思う。
冷静を掻いたくのたま程、恐ろしいものはない。
「バッカじゃないの!?天女って言っても顔が可愛いだけで普通の女じゃん」
「…だらけた忍たまなんて、学園の恥さらしだわ」
「あんな子居なくなればいいのよ!!」
…ほんと、女子怖いなーって考えながら今日の昼飯を考えていた。
皆は気づいてないけど、天女様が来てから美味しい食堂のご飯がさらに美味しくなっている。
特にお味噌汁は絶品ものだ。
食堂のおばちゃんに聞いてみたら、天女様が作ったらしい。
皆、天女様は仕事をしていないと言っているが、見てないだけで天女様はちゃんと仕事をしているみたいなんだよね。
「ヒノエ、アンタはどう思う?」
『天女よりご飯が食べたい』
「…はぁ、相変わらずマイペースね」
呆れるが、少しだけ笑った同僚にまだ学園は大丈夫だと思う。
笑える分、まだ大丈夫。
冷静に見れば、どれだけのほどが見えるか…でも、今の皆には聞こえないだろう。
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