ああ、天女様!

□2.嫉妬と先入観
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『ふへー、終わったみたいだね』
「うっす!」
「助かりました…!」
「…」

結局、手伝ってたのがバレてしまい、最終的には卯ぬも言わさずガッツリと手伝った。

図書委員会の仕事でこうなってるんだ。
他の委員会の子達は一体、どうしてるのだろう。

「…先輩って、ユキちゃんやトモミちゃんみたいに、俺たちに意地悪しないんすね」
「き、きり丸…」
『ユキちゃんとトモミちゃん…あ、二年の子達だね!なーるほど、洗礼を受けたのか…あはは、私は無闇に忍たまに意地悪しないよー』

そう言って一年生の頭をなで回した。

「うわぁ!?」
「な、なにするんすか!」
『油断大敵火がボーボーだよー』

うんうん、困ってるみたいで可愛いなぁー。
久作くんも撫で回そうとしたら逃げられた。ちぇっ。

『二年になって更に生意気になったなぁ〜』
「ヒノエ先輩が変わらないままなんです」
『えー』

生意気な久作くんにムッてすると、一年生達がちょっとだけ笑った。

でも、直ぐに皆が顔を青ざめてそっぽを向いた。

知ってる先輩の声がしてきて、理由がわかった。

「天女様、掃除なら僕が変わりますよ!中在家先輩もそうおっしゃってます!」
「え、あ…」

不破先輩と中在家先輩が、天女様と一緒にいた。
おお、さっきまでの和やかな雰囲気とは違って、かなり重たい。

当然かな…優しかった先輩が、委員会をほったらかして女の人の所にいる。
この子達にとって、どれだけ最悪なことか…。

「…不破先輩…中在家先輩、なんで…」
「奇士丸…」
「…天女なんて、居なくなればいいんだ」

おっふ…まさか…下級生も天女様を嫌ってるのか…。
いやー、一年生の口から居なくなれ発言を聞くとは、かなり嘆かわしいぞ。

うーん、先輩達は久作くん達に気が付く様子がなくて天女様にべったり見とれてる。
当の天女様はオドオドしていて、困ってるみたいだった。

あ、やべ。
目があっちゃった。
助けるべきだよねー…若干泣いてるみたいだし。
まぁ、くのたまの先輩に目を覚まさせまーす、なんて言っちゃったし。

『不破先ぱーい、中在家先ぱーい!』

大きな声で先輩達に話しかける。
一緒にいた久作くんたちがかなりビクついて可愛…じゃなくて、集中しないと。

「…」

無視か!!ちょ、無視はやめてくださいよ。
流石に悲しいじゃないですか。

『無視はよくないでーす』
「ヒノエ先輩、無駄ですよ」
『へ?』
「…こっちから話し掛けても、全く気付いてくれないんです」

なんと。
無視じゃなくて気付いてないのか。
凄いな。
どれだけ天女様が好きなんだよ。
そんなに好きなら天女様の気持ちも考えろって。

『あのさー、無視されるのって気分悪いよねー』
「え、あ…そうですね」
『よし、ちょっと待ってて』

そう言い残して、三人の所に近づく。
おやおや、本当に気づいてないようだねー。

先輩、勘が鈍っちゃいましたねー。

不破先輩の迷い癖、興味あったんですよ。
中在家先輩の言葉の聞き取り、あと少しで攻略できたのに、残念だ。
そう思いながら、背中まで近付いて…

『こんちわー!天女様ぁー!!』

二人を無視することにした。





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