ああ、天女様!

□3.疑念と可能性
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『ボーロ完食です』

本音は、違う。

“天女様は、男の人が苦手かも”

今これを言っても先輩達は信じないだろう。

私の発言に、先輩はなに言ってんのこの子って顔をされて溜め息をつかれた。
失礼ですねー。

天女様は忍たまに言い寄られてる。
けど、かなり迷惑そうな感じがした。
それに、忍たまたちの名前を呼んでる所を見たことがない。
代わりに、私の名前を呼んでいた。

この事から、天女様は男の人が苦手って予測した。
でも、先輩達は気付く気ないだろうなー。

なんてったって、先輩達は女として天女様を嫌ってるみたいだし。

「もういいわ…それで、天女とは“仲良く”してるのかしら?」
『はぁい“仲良く”してまーす。急がば回れって言いますでしょ?』

先輩に向かってニコリと笑う。
“仲良く”とは、天女様を油断させる為の作戦のこと。
天女様を殺す気はないけど、先輩達にはそういう事にしている。
じゃないと、天女様とまともに話が出来ない。
それは困る。

よく知りもしないのに嫌う、なんて傲慢な感情だろう。

先輩をバカにするつもりはないけど、もっと視界を広げれば見えるんだと思うのに。

『あ、先輩!何なら内職手伝ってくれませんか?今、バラ作りと砲弾磨きのバイトしてるんで』
「バイトって…相変わらず、マイペースな子ね」
『時は金なり、って言いますから!』

内職道具を取り出して、ニッコリ笑う。
呆れてるけど、スクスクと笑い出す先輩たち。

「って…毎回、バラ作りしてるけど…それ、売れるの?」
『売れますよー、匿名で買っていく人がいるんですー…最近はめっきり減っちゃいましたけど』

そう言うと、先輩達はお互いに顔を合わせて吹き出した。

「それ、忍たま四年の平滝夜叉丸じゃん」
『え、買ってくの滝夜叉丸くんだったんですかー』

そう言えば、あの人の周りだけバラが飛んでるんだよね。
これで謎が解けましたーって笑ったら、先輩達が大爆笑。

大丈夫、まだ笑える。
時間の問題だけど、まだ大丈夫。


そう、自分に言い聞かせて先輩達が居なくなった後、バラを作り始めた。

今日も天女様に会いに行こう。




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