ああ、天女様!

□4.余裕と本心
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『綾部くーん、これは何かなー?』
「バラです」
『うん、バラバラのバラね。鉢屋先輩、駄洒落じゃないんで失笑しないでくださーい』

いやー、穴堀小僧に繊細なバラ作りをさせたのは失敗でしたね。
見事にぐちゃぐちゃのバラバラですよ。

それに対して鉢屋先輩は器用で助かります。
もう軽く30本は出来たんじゃないかな。
追加で50本作らせようとしたら「人使い荒い」って言われて拒否られました。
ちぇっ。

「飽きちゃった」
『綾部くんは最初からでしょー』

ふてくされて仕事を放棄された。
確かに、この作業って楽しーって訳じゃないからねー。

お疲れだろうと思い、密かに蓄えていた取って置きの茶菓子を出すと二人に凝視された。
こらこら、そんな顔しない。

『お気に入りなんですが、手伝ってくれたお礼に食べて良いですよー』
「くのたまに出されたものをそう易々とな…」
「わーい」
「綾部っ!」
『あ、鉢屋先輩はお煎餅の方がいいですかー?』

綾部くんがお菓子を食べ始めると、鉢屋先輩も渋々お煎餅を食べ始めた。

そこのお店、醤油風味のお煎餅が絶品なんです。

「食べないの?」
『夜中に食べると牛になるので止めときまーす』

ふーんと言ってお菓子を完食した綾部くん。
あーもー、綾部くんの口の周りにお菓子がべたべた。

『口拭いてくださいねー』

そう言って綾部くんの口を手拭いで拭くと、目を見開いた状態で見詰められた。
うぉい。
綺麗な顔が台無しだぞ。

「…キミって、くのたまっぽくないよねぇ」
『くのたまの先輩にも、よく言われるよー』

私と綾部くんが話してると、鉢屋先輩が「お前達の口調、眠たくなる…」って言われた。
そうかな?

あ、そう言えばたまに同じ組の人に「ヒノエって忍たまの穴堀小僧に似てる」って言われたっけ?

まぁいいや。布団を敷こう。
流石に内職手伝ってくれたのに、床で寝らせるのはちょっとねー。

『綾部くん、鉢屋先輩、この部屋に布団は一つしかないので借りてきますねー』

そう言って部屋を出た私は、こっそりと中在家先輩と久作くんが持ってきたという、真っ赤な椿が落ちている絵が描かれた栞を見つめた。

この椿の意味は、首落ち。

大丈夫、学園内で“誰も”殺させないから。

そう思いながら、布団を取りに向かう。



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