text

□子供騙し(国影)
1ページ/1ページ


「影山…寝ちゃった?」
「ん…まだ起きてる…」

後片付けを一通り終えて、部屋にもどってきた俺は、ベットに横たわっている影山に目を向けた。情事後特有の火照った体や、儚げに薄く開かれてこちらを見る瞳にまたムラムラしてきて、ああ、なんかどうしようもないな、俺。と苦笑した。こいつが好きすぎて、本当にどうしようもない。

「お……まえ……今日、激しすぎ。……腰いてぇ」
「ごめん、ごめん。でも、薬飲むの忘れたのは影山だろ?あんなに、気をつけろって言ったのに」

まあ、薬隠したのは俺だけど。
俺を疑うという考えが影山の中には存在していないのだろう、と優越感にほくそ笑む。

「発情期に薬なしでヤるとか久しぶりで…ゴムつける理性残ってただけ、誉めてよ」
「ったりめーだろ……子供、できんぞ……」

ベットの中に入り込み、影山の横に寝転がる。うなじに手を回して、そこにある痕を撫でながら、満足感に浸っていた俺は、突然でてきた単語に、顔をしかめた。

「子供……ね」

正直、いらない。
影山を誰かと分け合うなんて、例え自分の子供でも嫌だから。
でも……
俺はふと、考える。俺らが愛し合った確かな証が、影山の腹の中でどんどん大きくなって、こいつが、その証のせいでバレーも何もできなくなって、俺だけを頼っていくようになるなら……それも悪くないかもしれない。俺は彼に向かって、悪戯っぽく微笑んだ。

「じゃあ、子供、つくってみる?」

−俺の愛で、お前が動けなくなってしまえばいい
そう思いながら影山の髪を梳くと、影山はムスッと口を開いた。

「……俺、子供に国見とられんの……やだ」

ふいっと顔を逸らされる。
その姿は、それこそ幼子のようだった。照れているのか、少し見える横顔は、赤い。
影山からのまさかの不意打ちに、俺は目を大きく見開いた。胸の奥がじんわり暖かくなって、思わず、背中に腕を回し、抱き締める。
……ああ、やっぱり、俺らの間に“子供”はできないかな。きっと“それ”はどちらの親にも愛して貰えない可哀想なひとつの肉塊として、この部屋の隅に放っておかれるだけだろう。
いつのまにか目を閉じ、眠りかけている恋人の頬にそっとキスを落とす。
結局、俺はこれからもこいつがいれば、満足で幸せなのだ。
そして、それは−

「国見…」
「ん、なぁに?」
「もう、俺のそばから離れんなよ」

きっと、こいつも同じ。

「おまえこそ」と囁いて再び抱き締めた体は暖
かくて、“子供体温”という言葉がふと、頭に浮かんだ。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ