お願い! 神様サンタ様
□@調合、爆発。
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「クッソめんどくせぇ」
長い銀髪を高い位置で一つに結び、白い袴からぬっと出た足は筋肉質。
目付きの悪いこの人が、今の私の主人。
「京魏蘭様がいけないのです。少しは仕事をしてください」
「俺様何様神様だぜ。神は傍観者だ。人間は心のどっかで俺らなんて本当は存在してないと思い込んでやがる。俺が願いを叶えてやる筋合いなんかないね」
「それは逆ですよ、京魏蘭様。願いを叶えるからこそ、人は神を信じるのです。願いを叶えない京魏蘭様は、信じられなくて当然です」
綺麗に磨かれた板張りの部屋で、ごろ寝をして呟く神、京魏蘭(きょうぎらん)。
れっきとした神様なのに、この有様。
というのも、この神社は京魏蘭の父上が管理をしているため。
京魏蘭は暇を持て余して持て余して持て余した結果、父上に「祈願成就でもしてこいっ」と放り出されそうになったのである。
それもそう、この神様、一日中横になっているだけ。
御祈りに来る人間の願いすら鼻をほじってまともに聞かない。
怒られるのも当然だ。
私、箏鬼朗林(こときろうりん)は京魏蘭の父上に仕えている者。
ただ、京魏蘭の父上は偉大なお方なので、私のように仕えている者もたくさん。
私は、左遷させられたのか昇格したのか微妙なラインで、京魏蘭の父上の命により、京魏蘭に仕える者となった。
主な仕事内容、雑用。
少しムッとして、妙な理屈を並べる京魏蘭を蹴った。
「イッてぇな! 神を蹴るなんて愚行だぜぞ」
お尻を抑えて立ち上がる京魏蘭を、箏鬼朗林は引っ張る。
「仕事をしてください」
「だから、信仰者がいないとやる気にならないと言っている」
「お祈りも聞かない貴方が何を言っているんです! まずは祈りを聞くことからです。祈っているイコール信仰者ですから、ちゃんと叶えてあげてください!」
「……めんどくせぇ」
あろうことか京魏蘭はドカッと賽銭箱に座り、信仰者を待ち始めた。
一応、力のある神様の京魏蘭は、自在に姿を消したり見せたり出来るのだ。
箏鬼朗林は木の影に隠れて参拝者を待つ。
京魏蘭に仕事をしてもらいたい。
*****
「お願いしますサンタ様! どうか私に金髪碧眼の王子様風男子を恵んでください!」
学校をつまらないと思うのは、イケメンがいないからである。
夢野花子(ゆめのはなこ)はそう信じて疑わない。
花子の理想男性像は金髪碧眼の王子様風男子。
それ以外はありえない。
そう、花子は初恋も体験したことがない、うぶな桜丘高校の二年生。
高校生になればさすがに、金髪碧眼が一人くらいはいるだろう、と思っていたのに、周りにいるのは……。
口にするのも嫌だ。
桜丘高校を選んだのは、単に名前から。
桜丘は「さくらおか」と読むけれど、一番最初に花子が見た時は「おうきゅう」と読んだのだ。
これを運命と呼ばずして、何と呼ぶ。
転校してくる可能性を蜘蛛の糸に、花子は神社に訪れた。
管理されてはいるものの、小規模で参拝者も少ない桜丘高校の近くにある神社。
神社の長い階段は少し辛いけど、それはダイエットだとでも思っておこう。
ここで、これから毎日お祈りをする。
花子はそう心に決めた。
*****
花子は家に帰り、早々に寝てしまうことにした。
夢の中で金髪碧眼王子様風男子と夢野王道ラブストーリーを。
蜘蛛の糸でもあるなら掴む。
枕の下に「拝啓サンタ様」と書いた封筒を挟んでおく。
内容はもちろん、イケメンを恵んでください、というお祈り文だ。
王道ラブストーリーじゃなくても良いので、遠くで見ているだけで良いので、どうか恵んでください。
理想の男子像を頭の中で思い浮かべ、少しテンションが上がったまま、ぬくぬくの布団に包まれた花子は意識を手放した。
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