忍具ノ里
□Bitter sweet
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火影室を出ると扉の隣の壁にもたれたネジが待っていた。
「遅かったな」
「ネジのせいよ…まったく」
「…俺が何かしたか?」
「そういう意味じゃないわ」
テンテンはネジに構わずスタスタと廊下を歩いていく。
「……」
「……お前」
なんにもないわよ、と言いかけた瞬間、後ろから力強く腕を引かれた。
自分を引っ張る相手は一人しかいない。
「なによ」
「拗ねてるのかお前」
「はい!?」
「今日がバレンタインだから」
「す、拗ねなんか…………」
悔しくもネジの図星の言葉に返事も弱々しくなっていく。
「…拗ねなんかないわよ………」
あまりの恥ずかしさに下にうつむきネジから目を反らした。
「毎年のことだろ」
「……ネジに私の気持ちなんかわからないわよ」
「そうか?」
「そうよ…」
「だったらお前のが誰のよりも一番欲しいっていう俺の気持ちもお前にはわからないな」
そしてネジに顎を手で掴まれ、二人の唇が重なった。
「……んっ…ぁ」
火影邸の廊下を二人の吐息の音が占領する。離れては口づけて、繰り返されるその行為に、テンテンは甘く溺れていた。
「お前は俺のことだけ考えてればいい」
「……ネジ」
ようやく離れた唇は少し意地悪な笑みを浮かべていた。
「……ずっと任務だったから何も作ってないの」
「ああ」
「い、今から作るから……その…」
「焦るな」
ネジはテンテンの髪を耳にかける。甘い香りが鼻を掠めていく。
「今からお前の家行くから」
ふわりと耳に吐息がかかり思わず赤く染まる。
「……ゆっくり待っててやるよ」
テンテンの家に来たもののネジに色々されその日は作れず、後日テンテンにこっぴどく怒られたネジの話はまた別の話。
終わり