忍具ノ里

□春の予感
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好きになっちゃったよ。



どうしよう。どうしよう。
彼を見ると心臓がドキドキして彼以外何も見えなくなるの………。








「テンテン」



彼が私に声を掛ける。



「ど、ど、どうしたの?」


「?………ガイ先生からの招集だ」


「あ、あぁそうなの…?」


「……お前今日なんか変だぞ?」


そんなことないよと答えるも心臓は相変わらず正直で、かなり焦っているのが分かった。





今までこれが恋だとは気づかなかった。

いつもネジを見ると嬉しくて、一緒にいると楽しくて、他の女の子と話しているのを見ると悲しくなった。日常化し過ぎて自分でも理解出来てなかった。



でもその想いは日に日に増していく。そんな自分が怖くなってサクラに相談した。そしたら…



『それは恋ですよ、テンテンさん』



と言われた。


恋だと分かるとあぁそうなのかと、自分でも驚くほどに案外すんなりと受け入れることができた。



しかし困ったなぁー……。



こんなんじゃ任務に集中できない。ましてやネジとの久しぶりの任務。ちゃんとこなさなきゃいけないのは自分が一番知っている。


今目の前にいる人はこんな想いなんか露も知らない。不思議そうに私を見ている。



ため息をつき落ち込んでいると、いきなり私の額に手が置かれた。


「えっ……」


「……熱はないな」


「……」 


色素の薄い眼がこちらを向く。私の頬はきっと今頃真っ赤に染まっていることだろう。



「無理はするな」


「してない……」


「お前の元気がないと俺が不安になる」


少し口角を上げたネジの表情はとても優しい。二人の間に柔らかい風が吹き抜ける。


「………ネジ」


「ん?」


「好き」




あぁ言ってしまったと少しの後悔。
ネジは驚いていた。彼らしくない表情をして。さっきとはまるで大違い。




「テンテン……」



「ネジといると心が幸せでいっぱいになるの。ドキドキしてソワソワして……これが恋なんだって」



ネジは黙って私の話を聞いている。



「ネジが私のこと好きじゃないのは分かってる。でも…「それは違う」



ネジが私の言葉を遮る。そして腕を掴んだ。触られた腕がなんとももどかしい。


「お前といると胸が騒がしいし苦しくなる」



ネジは掴んだ腕に力を込める清々しい表情を浮かべて、



「これって恋だろ?」



って呟いた。


予想もしなかった答えに私は瞬きすら出来ない状態だった。


「う、嘘……!」


「嘘じゃない」



ネジが腕をクンッと軽く引き寄せると私はネジの胸に寄りかかる。そして耳元に彼の吐息が掛かった。




「……お前が好きだ」




その言葉にいつもならドキドキしているはずの心臓がピタリと止まった。なんか肩の荷が降りた気分。


「なんか安心しちゃった……」


「…なんで?」


「ここ最近ずっと悩んでたから」


「それは大変だったな」



くつくつと喉で笑う彼に思いっきり抱き締められた。さっきみたいに間を通り抜ける風はもうない。



「……離さないからな」





桜の蕾が付き始めている。春はもうすぐそこで待っている。暖かい風に二人は包まれながら時は少しずつ過ぎていった。




貴方の言葉は私をドキドキさせるの。お願いだからこれからも私を幸せにさせてね。



終わり





[おまけ]




「あの二人遅いですねガイ先生!」


「今日はせっかくカカシ班との合同任務だって言うのになぁ」


「まあまあ少しくらいいいじゃないの」


「(絶対ネジさんと何かあったんだ……!告白したのかな?これは後でゆっくり聞かないとね……?)」



一人顔を緩ませるサクラであった。
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